コスメ会社LUSHがなぜ反原発キャンペーン?—— 客との接点は倫理観 via Business Insider

イギリス発のコスメメーカー「LUSH(ラッシュ)」が、山口県上関町に中国電力が計画している上関原子力発電所の建設中止を求める署名キャンペーンを行っている。署名は安倍晋三首相と世耕弘成経済産業大臣に届ける予定だ。企業がこうした運動をすることをタブー視する風潮もある中、なぜ踏み切ったのか。

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「知らないことばかりでした。東京に住んでいると原発は遠い地方の話に感じてしまうけれど、私にできることがあるなら協力したいなと」

「大学生になってよく旅行するようになり、自然って大切だなと思っていたので、ぜひ守ってほしいと思いました。ラッシュは動物実験に反対していたり、化粧品の材料に自然由来のものを使っていて、もともと共感することが多かったけど、本当にいろんな社会問題に取り組んでいると分かって、信頼感が増しましたね」

と言い、署名にサインした。その日はほかにも、環境保護に興味があるという女子大学生や、韓国人の男性もスタッフから韓国語で説明を受け署名していた。

西川さんは、客が希望する商品案内を終えて信頼関係が築けた後に、「最後に1分だけお時間いいでしょうか?」と声をかけたり、塩や海藻など海のものを原材料に使った商品の説明をしたりしているときに合わせて、この署名キャンペーンの案内をすることが多いという。反応はさまざまで、上関の海の美しさに「ここ本当に日本なんですか」と驚き協力する人もいれば、「生活のために原発は必要」「中立でいたいから」と断る人もいるそうだ。

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求めているのは、2011年の東日本大震災で東京電力福島第一原発の事故が起きて以降、準備工事が中断したままになっている上関原発の新規立地計画の中止と、政府が2018年夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」に「新規立地計画中止」の文言を盛り込むことの2点だ。経済産業省の素案では新増設には触れておらず、どのような表現になるのか社会の関心も高い。

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ラッシュは今回の署名キャンペーンをするにあたり、経営陣や社員、店舗の販売員などで上関町に行き、上関の自然を守る会代表や町の人々から話を聞き、船に乗って海の様子を見るなどの研修を行った。ラッシュジャパンのエディターとしてPR記事や動画を制作するエディターの山下夏子さん(23)も研修に参加した一人だ。原発は必要ないと思っていても地域の事情で選挙では推進派に投票している人など、揺れ動く町の様子を実感したそうだ。

「対立しているのは、みなさん故郷が好きでずっとそこで暮らして行きたいと思っているからこそだと感じました。未来に何を残せばハッピーになるか考えたときに、サステナブルではない原発よりも自然を、という方向に進んでほしいなと。原発がなければ何もない町になるという意見の人もいますが、そのままの自然が本当に素敵で価値があるということを伝えていくのが私たちの役割だと思っています」(山下さん)

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「言論の自由」掲げて客と議論

東日本大震災以降、原発に関する社会の関心は高まっている。一方で、対立やさまざまなステレオタイプも広まり、自身の意見を表明することすらためらう人も多い。原発への反対意思を明確にする今回のキャンペーンは、一部の消費者にはマイナスイメージにつながると考えなかったのだろうか。ラッシュジャパンでチャリティ活動を担当する種村香奈美さん(33歳、チャリティバンク事務局)は言う。

「さまざまな考えの方がいらっしゃって当然です。 私たちも1つの考えを押し付けたいわけではありません。お客様がただお買い物を楽しむだけでなく、ラッシュという場所を通して原発や環境、エネルギーの問題と出合い、身近なこととして考えてもらうきっかけになればうれしいです」(種村さん)

前出の西川さんも山下さんも、ラッシュのEthicsや社会問題に取り組む姿勢に惹かれて入社した。山下さんは当時は新卒採用がなかったが、自ら打診して学生インターンからスタートして社員になっている。 社員同士も日頃から政治や時事問題について活発に議論しており、「言論の自由」を掲げて消費者など一般の人と問題を共有し議論する専用の企業SNSアカウントもある。

「 “Give a voice to voiceless”、声なき人々の声になることをラッシュでは大切にしています。私も常にそういう視点を大事にしていますし、日頃から世界で起きていることに興味をもち考えるようになりました。ラッシュにはそういったことを話したり学んだりするカルチャーがあるんです」 (山下さん)

ふらっとコスメを買いに行って、社会問題に出合う。そんな機会が増えるだろうか。

(文・竹下郁子)

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