東日本大震災を機に20代を過ごした日本を離れ、欧州に戻ったハンガリー人のポポウィチュ・ぺーテルさん(36)が今年3月、当時の心境を著作「3・11~愛する日本を去る日」にまとめた。欧州人が感じた震災の衝撃が、ハンガリー語と日本語で記されている。
2001年に19歳で来日。個人を重視する欧州に比べて人間関係を大事にする日本が好きになり、日本語も堪能になった。在日のドイツ系企業に就職し、そのまま日本で暮らすつもりだった。
「あの日」は横浜市の会社で迎えた。頭をよぎったのは出身地に近いウクライナ・チェルノブイリの原発事故だ。当時、娘は生後2カ月。関東地方に放射性物質の飛来が報じられ、帰国を決断した。
当時の判断が間違っていたとは思わない。だが日本への思いは消えなかった。今年8月、安定した職を捨て、スウェーデンで日欧の企業を比較研究する学生となった。「脱原発」が進まない現状には失望しつつ、「大好きな日本に何らかの恩返しをしたい」と願う。【三木幸治】