福島・富岡町、帰還準備は3% 院長無念の病院解体 診療所で再出発「住民戻るかも」via 毎日新聞

東京電力福島第1原発事故が起きるまで福島県富岡町内で唯一の病院だった「今村病院」が今春にも、解体される。院長だった今村諭さん(61)は昨年、新たな町立診療所の所長として地域医療の現場に戻った。4月1日に予定される避難指示解除後も帰還する住民は一部にとどまる見通しで、原発事故まで約20年間、守り続けてきた病院の経営が成り立たないと判断したからだ。【杉直樹、土江洋範】

[…]

「廃虚にしたくない」と床に散らばるカルテを整理し、施設を修繕したが、年数百万円の維持費がのしかかるだけで再開のめどは立たない。東京電力からの賠償金も多くが病院の債務返済に消えた。6億円近くかかる建物の解体費に国費が出ることもあり、「もはや病院は負の遺産だ」と苦渋の決断をした。

 「先生、いつ始めるの」。診療所長を引き受けたのは再起の糸口を見いだせずにいたころ、住民の言葉に背中を押されたからだ。「診療を再開すればみんなが戻ってくるかもしれない」。2016年9月下旬、平屋建ての診療所の前で町長らと開所のテープカットをした。式典では「町の復興のシンボルに」とあいさつした。

 開所日、初めて診察したのはなじみの患者だった。「私の病状をよく分かってくれているから」と避難先の東京から福島に戻ってきてくれた女性もいる。診療を休んでいた間、ずっと患者の体調が気にかかっていただけに、気持ちが少し軽くなった。

 古里で必要とされる医者であり続けたいと思う。「今はもう前に、前に進むしかないね」

8町村、診療中は1病院のみ

 福島第1原発事故の被災地は、住民が帰らなければ医療機関が再開できず、医療機関が開かなければ住民が帰還できないというジレンマに陥っている。

 原発事故で避難指示が出た福島県双葉郡8町村の6病院(計1047床)のうち、今村病院を含む5病院は再開のめどが立たない。患者が減少した上に看護師らの確保も困難なためだ。唯一診療を続ける広野町の高野病院は昨年末、院長が死亡し一時常勤医がゼロになり、地域医療の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈した。事故前に48あった診療所も12カ所に。県は2018年に富岡町に30床を備えた病院を整備する。

 復興庁などが昨年8月、富岡町民に実施した意向調査によると、帰還を諦めたり、迷ったりしている世帯は83%で、理由の最多は「医療環境に不安がある」だった。

 

もっと読む。

This entry was posted in *日本語 and tagged , , . Bookmark the permalink.

Leave a Reply