米、核兵器禁止条約に強く反対 国連委で推進派を牽制 via 朝日新聞

国連総会第1委員会で議論されている「核兵器禁止条約」について、米国が14日、強く反対を表明し、各国に同調を呼びかけた。核保有国や「核の傘」の下にある国も追随。来年の交渉開始を求める決議案を提出した非保有国側は、採択に向けて米国などによる切り崩しを警戒する。

「米国は核兵器禁止条約の交渉を立ち上げる決議にノーだ。(採択されても)交渉には参加しない。他国も同じ行動をするように強く求める」。米国のウッド軍縮大使は14日の第1委員会で、各国代表団に呼びかけた。核の傘の下にある同盟国以外にも、公然とプレッシャーをかけた形だ。

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ウッド大使は核不拡散条約(NPT)など、「現実的で全会一致を基本としたアプローチこそが、(核軍縮が)前進するための正しい道だ」と強調。同盟国核の傘の下にある国々も同調し、英国は「各国代表たちよ、よく考えて欲しい。全会一致が採られているジュネーブ軍縮会議(CD)や、NPTの再検討会議(で議論する我々)に加わることを求める」と禁止条約の推進派を牽制(けんせい)。オーストラリアはOEWGが核保有国が不参加のままで決定されたことを懸念。ドイツと共に「核保有国抜きで禁止条約の議論を進めても核軍縮にはつながらない」と批判した。

ログイン前の続き核保有国が禁止条約に反対する根拠とするのが核抑止力だ。ウッド大使は「禁止条約は地域の安全保障を台無しにする危険をはらんでいる。平和と安定を維持する上で、核兵器が役割を果たしている地域もあるという現実を否定できない」と主張。他の保有国も「核兵器は、我々の集団安全保障体制に欠くことができない要素だ」(フランス)、「禁止条約と、信頼性のある核抑止を両立することはできない」(英国)とした。

日本はこの日、意見を表明しなかったが、日本政府関係者は「人道的アプローチと米国の核抑止力のはざまにおかれて、被爆国として非常に苦しい立場だ」と語った。

一方、推進国を主導するメキシコのロモナコ大使は「(大量破壊兵器である核兵器の)使用を防ぎ、核爆発に伴う人道的影響を防ぐ唯一の保証は核兵器の全廃しかない」と述べた上で、NPTなど主要な核軍縮の体制が停滞する現状を打開するため、核兵器禁止の法的措置を推進すると訴えた。

推進国側が警戒するのは水面下での圧力だ。中南米のある外交官は表だった圧力は否定したが、「核禁止をすればロシアや中国は無視するが、困るのは『よい民主国家』である米英仏だとの意見が、核保有国から届いた」と説得工作があったことを明かす。別の外交官は「全会一致」を決議案に盛り込むことに言及する国が水面下で出てきていると明かす。盛り込めば一国でも反対することで、核兵器禁止条約の交渉を止めることができるため、共同提案国は切り崩しの動きに神経をとがらせている。(ニューヨーク=杉崎慎弥、松尾一郎、田井中雅人

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