ここでは放射線の影「裏」の世界についてお話します。原発事故が起き、放射性物質が拡散しても、医療関係者からの発言が少ないのはなぜでしょうか?
それは、医師や診療放射線技師、看護師などが使っている放射線防護学に関する教科書が、すべて「ICRP(国際放射線防護委員会)」の基準で書かれているからです。文部科学省が学校に配った副読本なども、その基準で書かれています。
ICRPは、国際的な権威のある公的機関ではありません。研究機関や調査機関でもない、民間のNPO組織です。その目的は原子力政策の推進にあり ます。このため、「IAEA(国際原子力機関)」や「UNSCEAR(国連放射線影響科学委員会)」などと手を組み、原子力政策を推進する上で、支障のな い程度の報告書を出しています。
報告書は、各国の御用学者が会議に招聘され、都合のよい論文だけを採用して作られています。ICRP自体が、調査・研究することはありません。 ICRPには事務局が存在しても研究者はいないため、多くの医学論文で低線量被ばくの健康被害が報告されても、反論できずに無視する姿勢をとっています。 国際的に放射線防護体系として流布しているICRPの理論は科学性に乏しいのです。
つまり、ICRPの放射線防護学は、原子力政策を進めるために作られた”フィクション”のようなもの。
(略)
2014年4月26日、私はボランティアで行っている子どもたちの甲状腺超音波検査のために福島県須賀川市を訪ねました。検査会場となった公民館前 に設置されていたモニタリングポストを調べてみると、0.11マイクロシーベルト(1時間当たり)。しかし私が、病院で使用する測定器で調べると0.19 マイクロシーベルトでした。
つまり、私の線量計の数値を100%とするとモニタリングポストの値は58%で、4割程度低くなっています。この問題は『週刊朝日』2014年2 月14日号で「国の放射線測定のデタラメを暴く」と題して報じられました。モニタリングポストは地上1メートルの高さにありますが、地面直上だと放射線量 は2倍以上になります。放射線量の値をごまかし、事実を隠しているとしか思えません。
「バイオアッセイ」を行う姿勢すらもたない政府
ガンマ線ですら、そのようなレベルの調査。それ以外のアルファ線やベータ線は、計測すらきちんと行われていません。この2つを調べるには、「バイ オアッセイ(排泄物などの生物学的試料を分析する方法)」が必要です。トリカブトやヒ素を使ったことが疑われる殺人事件が起きたら、警察はバイオアッセイ して被害者の毒物を測ります。
ところが、多くの国民の健康被害に関係するにもかかわらず、国はアルファ線やベータ線をバイオアッセイで測ろうとする姿勢をまったく持っていませ ん。これでは「科学的に物事を検証する気がないのか」「事故による将来の被害を隠蔽するためか」と勘ぐられても仕方ありません。
これまで、低い値でも放射線による健康への影響が出た事例は数多く報告されています。放射線の影響に「しきい値」(閾値)はないというのが、世界の共通認識です。最近のICRPの勧告でさえも「1シーベルト浴びると、5.5%の過剰発がんがある」と認めています。
全文はICRPの”フィクション”に踊らされた、「低線量被ばく」の危機意識がない医療関係者たち
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