「美味しんぼ」では、低線量放射線の身体的影響に関して、以下のように描かれています。まず、登場人物が東京電力福島第一原子力発電所を視察した後に、鼻からの出血や疲労感を訴える場面が描かれています。また、大阪府・大阪市が実施した岩手県の震災がれき焼却によって身体的不調を訴える人が大勢いたことを専門家が説明する場面も描かれています。
低線量放射線の身体的影響については、これまでに数多くの学術研究が行われており、以下のことが明らかになっています。
放射線被ばく後、数週間以内に現れる身体的な異常を放射線による早期影響といいます。放射線による早期影響は、ある一定の被ばく線量を超えると現れます。被ばくした100人に1人以上の割合で影響が現れる最低線量をしきい線量と呼び、これまでに数多くのしきい線量に関するデータが蓄積されてきました。成人で最も低い線量で現れる影響は、睾丸への被ばくによる一時的不妊で、しきい線量は100 mGyと推定されています(国際放射線防護委員会2007年勧告, ICRP Publication 103)。これより低い線量の被ばくでは、鼻血や全身倦怠を含めて臨床的に観察可能な放射線が直接原因となる身体的影響は報告されていません。
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私達、放射線影響学会員は、放射線の生物影響を遺伝子、細胞、動物、及びヒトなど様々なレベルで研究しています。偶然ではなく、再現性をもって放射線が原因となる生物影響とそのメカニズムを明らかにしようと不断の努力を積み重ねています。しかし、生物影響の現れ方は多様で、動物実験が困難な研究もあります。そのため、放射線の人体影響については、未知のことが多く残されています。
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「未知のことが多く残されています」と認めつつも、鼻血その他は否定できる、という確信があるようだ。ICRPの報告の権威を訴えながら。