昨年夏、原発の安全などを提言する東海村の諮問機関「原子力安全対策懇談会」の住民代表の委員として、東海第二原発を視察した主婦永目裕子さん(57)は目の前の光景にあぜんとした。
緊急事態に出動する移動式電源車が、東海第二原発わきの少し高い空き地に三台そろって並んでいた。これらは同原発を運転する日本原子力発電(原電)が福島第一原発事故後、国の指示に従って新たに配備した。
永目さんは「三台すべてを同じ場所に置くことは危機管理上あり得ない。よく考えれば分かること」と驚いた。視察後、同所でトラブルが起きた場合を指摘し、他の委員とともに別の場所に分散させるよう求めた。
永目さんは「安全対策は、すべて国が言っているからという姿勢。もっと考えて主体的に動いてもらわなければ困る」と原電の受け身の姿勢に憤る。
東日本大震災後、永目さんら住民の不安は増している。東海第二原発が、福島第一原発と同じような過酷事故の手前までいきかけたからだ。震災による停電で東海第二は外部からの電源が断たれた。高さ五・四メートルの津波に襲われ、冷却水をくみ上げる三つのポンプと電気系統のうち一つが浸水で機能しなくなり非常用発電機を生かせなかった。残り二つも津波があと七十センチ高ければ、壁を越えた水で同様に機能しなくなるところだった。
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