◇ 第一回対談はこちら:原発もあの戦争も、「負けるまで」メディアも庶民も賛成だった?via 日経ビジネスonline
加藤陽子・東京大学文学部教授に聞く【第2回】
2011年8月23日(火)
池上:前回は、原発と戦争に対する国民の意識とメディアの姿勢について、加藤陽子先生とその共通点を探りました。原発も戦争も「負けるまで」、私たちは、消極的に、ある部分は積極的に「推進派」だったのかもしれない、ということが見えてきました。
では、今回はなぜ戦争に負けたのか、なぜ原発は事故を起こしたのか、という点について、「庶民」とは反対側、「トップマネジメント」に焦点をあてて考えていきたいと思います。
加藤:現場の情報を正確に迅速にくみ上げて、中長期的な見通しを踏まえたうえで、瞬時に適切な判断を行う。戦争にしろ、原子力発電の運営にしろ、トップマネジメントの成否は、結果を大きく左右するでしょうね。
ところが、トップマネジメントが機能しない状況が、戦時中も今回の事故対応でもいくつもありました。
なぜトップマネジメントが機能しないのか。
原因のひとつに、前のめりの積極主義といった傾向があるのではないか。変な用語で恐縮ですが、どういう意味かといいますと、人間の行為について最悪最低 の場合を想定して制度設計をしていないということです。上司は、部下は失敗しない、弱音をはかないものと思いたがる。一方部下も、率直に、困ったと言わな い。ニューギニアなど補給が続かない場所でも、現地軍はめったなことでは大本営に対して、補給や兵站キツイとは言わない。ですから、結果的に中央は末端、 現場の正確な情報を採ることができないまま、「戦局」が悪化する。このような悪循環は、戦争においても原発処理においても見られたのではないでしょうか。ただ、今回、福島第1原子力発電所の事故原因解明や安全規制のあり方を検討する事故調査・検証委員会の委員長に畑村洋太郎先生が就任しましたが、これはとてもいいニュースだと思います。
第一回対談は、原発と自衛隊のレトリックなど、面白く読めたけれど、今回は戦争を引き合いに出していても「だから負けたのだ。」(違うやり方なら勝てていたかも)「尊敬される上官」がいれば(勝てていたかも)原発事故処理もうまくいくのに、と言った論旨のように思えて残念。日経ビジネスという媒体の限界か。