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【寄稿】 「遺伝への懸念」がもたらす悲劇 via 福島民報

福島大教授 県民健康管理調査検討委員 清水修二

放射能災害の健康への影響を調べる県民健康管理調査については、「甲状腺がん」ばかりが問題になっているが、ある意味でもっと深刻なのは、遺伝的な影響を心配する県民意識の現状である。

6月の県民健康管理調査検討委員会で公表された「こころの健康度」調査結果によれば、避難区域住民を中心とした21万人余りの成人へのアンケート 調査で、「現在の放射線被ばくで、次世代以降の人への健康影響がどれくらい起こると思いますか」の問いに、実に34.9%が「可能性は非常に高い」と答え ている。やや高いと答えた人を加えれば60.2%だ。6割が被ばくの影響が遺伝すると考えている。これは大変なことである。

広島・長崎の被爆者の健康調査で、被ばくによる遺伝的な障害は確認されないという結論が出ている。チェルノブイリ事故の被災地でも、先天異常の発 生率は汚染地域と他地域とで差がないと公式に報告されている。まして、福島県の原発事故での住民の被ばく量はチェルノブイリと比べれば遙(はる)かに少な いのである。

心臓奇形をはじめとする先天奇形・異常は通常からある程度の確率で発生する。福島県でそうした子どもを出産した親の気持ちを考えてみてほしい。 「あの時、避難しなかったのがよくなかったのではないか」という悔恨、そして東京電力や政府に対する怨念や憤怒を、一生抱えながら生きることになるかもし れない。これは悲劇だ。

また、「妊産婦に関する調査」の結果も報告された。「次回妊娠・出産をお考えですか」との質問に「いいえ」と答えた人の14.6%(複数回答あ り)が「放射線の影響が心配なため」という理由に印を付けている。およそ7人に1人が遺伝的影響を恐れて子どもを持つことをためらっているということだ。 事故から既に2年半近くが経過している。この間、本当なら生まれていたはずの子どもが生まれていないという事態が、既に生じていると考えなければならな い。

被災者である県民自身が遺伝的影響の存在を深く信じているようだと、「福島の者とは結婚するな」と言われても全く反論できないし、子どもたち自身 から「私たち結婚できない」と問われて、はっきり否定することもできない。親子ともども一生、打ちのめされたような気持ちで生きなければならぬとしたら、 これほどの不幸はあるまい。

原爆被爆者たちが歩んだのと全く同じ苦難の道を、福島県民は歩まされるのだろうか。明確な根拠もなく遺伝的な影響を口にする世の「識者」たちは、自らの言動のもつ重い影響と責任を、自覚しているのだろうか。

続きは 【寄稿】 「遺伝への懸念」がもたらす悲劇

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One Response

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  1. kojimaaiko says

    たまらない気持ちになります。全く健康であるにも関わらずいわれのない差別を受けてこられた被曝二世、三世の方々ももちろん沢山いらっしゃる。でも同時に、「遺伝的影響はない」と結論づけられてしまったことで泣き寝入りせざるをえなかった方達も沢山いらっしゃったはずでしょう。

    放射能の恐怖を認識することと差別はどうしても表裏一体の関係にあります。差別は断固として許せない、しかしそれに立ち向かうには被曝の影響を全否定することでしかないのだろうか?被曝の影響を全否定してしまうことは同時に本当に苦しんでいる人の苦しみまでも全否定してしまうことではないか?被曝の「わからない」「ありえる」影響を認めた上でそれを差別につなげないやり方をどうやって模索していけばいいのか?簡単には答えのでない重い問い、向き合い続けなければいけないと思います。



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