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『社説 東日本大震災 チェルノブイリ/「不都合な真実」に向き合え』 via 河北新報

 「そこはキノコが豊富にあり、魚は餌を付けなくても針にかかるくらいいて、どこを歩いても赤い野いちごの実がなっていた」(『チェルノブイリ・ルポルタージュ』文・ウラジーミル・ヤボリフスキー)
 原子力発電史上、最悪の旧ソ連(現ウクライナ)チェルノブイリ原発事故から26日で25年を迎えた。
 バスで集団避難する住民、崩落した原子炉建屋、防護服に身を包んだ作業員…。ルポルタージュには、私たちが目にしているのと同じ光景を切り取った写真が収められている。
 東京電力福島第1原発事故は収束のめどが立たない。安全神話が崩れた今、私たちがすべきことは歴史を直視し、過去の経験に学ぶことだ。
 「対岸の火事」。チェルノブイリ事故に対する当時のわが国の反応だ。電気事業連合会は原子炉の安全設計上の問題や運転員の規則違反などを指摘した上で、事故原因を「安全文化の欠如」と決めつけた。
 にもかかわらず、事故は「原発先進国」であるはずの日本で現実に起きた。しかも、国際的な事故評価の尺度でチェルノブイリと同じ最悪のレベル7という形で。
 無論、二つの事故を同列に論じることはできない。チェルノブイリは原子炉自体が爆発したが、福島では圧力容器は破壊されていない。原子力安全・保安院は、放出された放射性物質の量がチェルノブイリの10%程度であることも「違い」に挙げる。
 だが、福島では高濃度汚染水が大量に海に流出。専門家は食物連鎖による生物の放射性物質濃縮の可能性を指摘している。そもそも福島では4基もがダメージを受け、しかも事故対策は遅々として進まない。
 東電は原子炉を安定状態に持ち込む工程表を発表した。仮にそれが成就したとしても、廃炉に向けた中長期の闘いが待っている。
 チェルノブイリでは、現在でも安全管理などのため約7千人が働く。爆発事故を起こした4号機はコンクリート製の「石棺」で覆われているが、老朽化が激しく、新たな覆いを早急に造る必要がある。
 福島では廃炉と汚染除去に100年—。英科学誌ネイチャーがそんな専門家の見方を紹介した。長い消耗戦を覚悟しなくてはならないのだ。
 何より心配なのは健康への影響だ。チェルノブイリ事故について世界保健機関(WHO)の下部組織は、がんによる死者数が計40カ国で2065年までに約1万6千人に達する恐れがあるとしている。
 国は事故後、「直ちに健康に影響を及ぼすとは考えられない」との説明を繰り返しているが、住民は不安を払(ふっ)拭(しょく)できずにいる。健康調査も長期にわたることは避けられない。
 「福島の場合、テクノロジーへの過信があったと思う」。フランスの原子力専門家の見方だ。四半世紀前の「不都合な真実」は、いったんは黙殺された。それを謙虚に受け止めることが、全ての議論の出発点になる。

『社説 東日本大震災 チェルノブイリ/「不都合な真実」に向き合え』

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