(抜粋)
鎌田慧氏(ルポライター)は冒頭、「川内原発が秋にも稼働されようとしている。しかし今夏は原発稼働ゼロ。これは脱原発を求める市民の力の成果だ」と挨拶。
次いで、伊東達也氏(原発をなくす全国連絡会)は東電原発事故の影響に喘ぐ福島の窮状について、「川内原発の再稼働を巡る状況が緊迫しているが、そ の一方で福島は今も苦しみの中にある」と訴えた。「避難生活を送る人の6割が心身の不調を訴え、自殺者は54人、仮設住宅で孤独死した人は34人。ある町 では職員の内15%がうつと診断されている。震災関連死は1729人に達した。原発から流れ出る汚染水は際限がなく、収束作業に当たる原発労働者には危険 手当も出ない」(伊東氏)。
ミサオ・レッドウルフ氏(首都圏反原発連合)は、「東電原発事故を『福島』という言葉で括ることが風評被害を生んでいる」とした上で、「汚染には地域差があり、関東にも及んでいることを踏まえれば、事故に対して一人ひとりが当事者性を持つ必要がある」と提起。
内橋克人氏(経済評論家)は「集団的自衛権の閣議決定が目前に迫っている。支配層が自衛を口実に核武装を求めているのは明らか。原発は電力需要のためではなく、プルトニウムを作るために動かされる」と警鐘を鳴らした。
安倍内閣が原発維持に向けた政策の地ならしを矢継ぎ早に進める中、関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、政府の原発推進姿勢に対 する楔となった。海渡雄一弁護士は「判決文では、原発の危険性は東電原発事故で明らかとなったとし、この判断を回避することは裁判所の責務を放棄すること だ、としている」と切り出し、「原発はすでに5回も基準地震動を上回る地震の揺れに見舞われており、そうした現実を無視してきたことが東電原発事故を招い た。テクニカルな科学論争に分け入らず、国の判断の誤りを指摘した今回の判決は論理的かつ科学的だ」と、意義を強調した。
「人格権よりも経済活動が劣位にあることを明記し、国民が暮らす豊かな国土が失われたことこそが国富の喪失だとしたこの判決を、今後の裁判でも守りたい。福井地裁判決を、日本の司法の揺るがぬ立脚点にしたい」(海渡氏)
【避難計画も未整備】
野呂正和氏(川内原発増設反対鹿児島県共闘会議)は、「避難計画には実効性があるのか」と疑問を投げ、「県知事と県議会議員に公開質問状で質した ら、自民党と公明党が会派ぐるみで『わからない』と答えた。原発から半径30キロメートル圏内には避難場所しか用意されず、食料の準備やスクリーニング検 査、避難用のバスの手配などすべてが県任せ」と述べ、避難計画が整っていないことを暴露した。
「原発事故から3年余りが過ぎ、健康被害は風評に言い換えられた。しかし現実には90人の子どもに甲状腺がんの疑いやがんが生じている。被曝の放置 こそ福島への差別。政府は避難と保養の取り組みを進めてほしい」と訴えたのは、「原発いらない福島の女たち」の人見やよい氏。「国や東電は、口では福島に 寄り添うと言うけれども、本当に寄り添ってくれたのは福井地裁判決。何度も読み返して涙があふれた」と語る。
全文は「脱原発」訴え都内で5500人規模の集会――「川内原発を再稼働させるな!」
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一行は3月から原発が立地する全国の自治体を巡ってきた。もともと16日に薩摩川内を訪れる予定で、審査書案公表の日に当たったのは偶然だという。責任者の矢向(やこう)由季さん(38)は「原発がなく、平和で人間らしく生きられる社会になってほしい」と話した。
川内原発建設反対連絡協議会など脱原発を訴える団体は16日午後、規制委の田中俊一委員長あての抗議文を、同市内の現地事務所に提出する。協議会の鳥原良子会長(65)は「要援護者の避難計画はできておらず、使用済み核燃料をどうするかも決まっていない中での再稼働は許されない」と話す。
九電が川内原発で起こりうるとした最大の基準地震動は620ガル。規制委もそれを妥当としたことに、鳥原さんは「楽観的だ。より大きな地震が起こる可能性は否めない。敷地近くに過去の噴火による火砕流の跡もあり、再び起こらないとは言えない」と訴える。
市民の中には、本人や家族が原発関連の仕事をする人も多く、表だって再稼働反対を言いづらい雰囲気があると感じる。それでも「市民も、福島で汚染水対策や除染が難航しているのをよく知っている。世の中の見方は少しずつ変わってきていると思います」と語った。