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タンクに貯蔵された処理水の汚染度には「大きなバラつき」がある
1000基のタンクのうち「J1−D」と呼ばれる9基のタンク群の中にある処理水は、ストロンチウムなどが排水基準を1万4000倍も超過しているというのだ。人体の骨などに残りやすい有害がストロンチウムなどがフィルターの不具合で残ったためだという。
断片的な新聞記事や日々のテレビニュースではたまにストロンチウムが処理できないことまでは報道しても、それが「フィルターの不具合」によるものだったということはこの「サンデーモーニング」の報道で初めて知った。
東京電力の担当者は番組の取材に以下のように答えている。
(東京電力 廃炉コミュニカーションセンター・木元崇宏副所長)
「最初の頃、ALPSを稼働させていろいろトラブルがありましたけど、トラブルがあった頃の水もたまっているのできれいになりきれなかった水がたまっているものもあります」
規制基準を上回る汚染処理水は今も全体の7割
番組では処理された汚染水が規制基準の内にあるかどうかをグラフ化して示した。すると処理後も基準の100倍以上というものもあり、全体で7割が規制基準を超えていることがわかった。
これに対して、国や東京電力の説明は以下の通りだ。
(国・東京電力)
「ALPSではトリチウム以外の放射性物質は除去できる」
「トリチウムは生物への影響も小さく、国内外の原子力発電所でも海洋放出はしている」
こうして説明されてきたので、筆者の認識もそうした程度にとどまっていた。トリチウム以外は問題はないのだろうと。
ところが番組では「(汚染処理水に)トリチウム以外の物質が含まれていることが明かになったのは一昨年になってからでした」と説明して、2018年8月に東京で行われた専門家会議の公聴会のVTRを映し出した。
(公聴会で発言した女性)
「トリチウムだと思ったら、トリチウムじゃない水だった。そういうことでもう・・・この公聴会、前提がおかしいです。やり直してください。以上です」
この発言の後で「そうだ!」という同意する声と拍手が聞こえたのでそう考えたのは彼女だけではないのだろう。
VTRのナレーションは「こうした事態は国の専門家会議でも問題になりました」と説明し、専門家会議での発言も紹介された。
森田貴巳氏(水産研究・教育機構 中央水産研究所)記事録より
「国民をだまそうとしているんじゃないかと一般の人に思わせてしまった」
東京電力の廃炉責任者は番組の取材に対して、説明不足を謝罪したものの処理水を再浄化することはできると話す。
(東京電力 福島第一廃炉推進カンパニー・小野明プレジデント)
「そういうこと(海洋放出)を国の方向性として出てくるなら、それがそれで我々は環境に出すための基準を満足するやり方をとる必要があると思っていますし、それは十分、これまでのALPSの実力からしても十分できることだと思っています」
この後、VTRは風評被害の打撃を受けている漁業関係者の不安な声を紹介して終わっていた。
ALPSが除去する実力がなかったことでたまってしまった、基準以上の危険が残ったままの汚染処理水
それでもALPSは基準を満たす除去の実力があるとする東電・国
海洋に流してしまう前にもっと検証して議論すべきことがあると、この日の「サンデーモーニング」の特集は教えてくれた。
日本人にはどうも「細かい話」に目をつぶってしまう癖がある。
スタジオに出演した鈴木達治郎氏(長崎大学教授・元原子力委員会委員長代理)が以下のようにコメントしていた。この言葉は肝に銘じたい。
「透明性と信頼性ということを言いたい。データが本当は処理されているはずだったのが処理されていないことが後でわかった。これが信頼をなくしている。だから常に第三者機関をつくって監視するシステムをつくってほしいと私も言ってきたが、それが実現していない」