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原発事故で翻弄された日常表現 保原高の教員中村さんが句集出版via 河北新報

原文

福島市在住の俳人中村晋さん(52)が、初めての句集「むずかしい平凡」を自費出版した。東京電力福島第1原発事故で翻弄(ほんろう)され続ける福島の日常を、生活者の視点に立って17文字で表現した。「原発事故とは何だったのかを振り返るきっかけにしたい」と話す。

 中村さんは保原高(伊達市)定時制課程の教員。俳句を始めた1995年ごろは自分の身の回りを詠んだ句が多かったが、福島市内の高校の定時制教員になった2004年ごろから作風が変化。さまざまな事情を抱える夜学生の境遇といった社会に目を向けた作品が増えた。
 東日本大震災後は、原発事故によって甚大な被害を受けた福島県の被災状況を詠んでいる。「むずかしい平凡」に収めた259句の中には、原発事故後の思いをつづった58句が含まれる。

 春の牛空気を食べて被曝(ひばく)した

 福島第1原発20キロ圏内で飼われていた家畜の牛は圏外へ運び出されずに被ばくし、多くが餓死したか殺処分された。中村さんは「残された牛の切なさ、酪農家のやるせなさをストレートに表現した」と言う。
 作った11年5月は事故後の混乱で創作意欲を失っていた。ある朝、目が覚めて思いついたという句は、師匠の金子兜太(とうた)の作品<猪(しし)がきて空気を食べる春の峠>がモチーフになった。「この句がポンと浮かんで、これからも俳句ができると思った」

 蟻(あり)光るよ被曝の土を埋めし土も

 除染土を埋めた自宅の敷地で、アリが動いているのを見て詠んだ。中村さんの句には「蟻」「蠅(はえ)」といった小さな生き物が多く登場する。「多くの命が失われた震災を経て小さな命を慈しむ思いが強くなった。原発事故に翻弄される人間がハエのような小さな存在に思えるようにもなった」と語る。
 句集のタイトル「むずかしい平凡」は、震災で当たり前の暮らしを続けることがいかに難しいかを実感して付けた。同時に感じるのは、行政による復興が効率優先で進められているのではないかという疑問。経済的な豊かさを最優先に復興を加速させた戦後日本の復興とも重なるという。
 中村さんは「戦後の日本は復興を進めるあまり人間性が置き去りになった」と強調。「句集を通して一度立ち止まり、本当の震災復興とは何かを問い直してほしい」と話す。
 四六判161ページ、1540円。出版元は「BONEKO BOOKS」。連絡先はメールでbonekobooks@gmail.com

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