- 2019/04/12
- 22:33
結局、福島県の内堀雅雄知事は〝予定通り〟に粛々と原発避難者支援策を打ち切った。3月31日で避難指示区域外からの〝自主避難者〟向け家賃補助制度が終了。国家公務員宿舎から退去しない避難者には、2倍の家賃請求が始まった。既に避難指示が解除された区域からの避難者に対する住宅提供も終わったが、新元号と新紙幣の〝祝賀ムード〟にすっかり隠れてしまった原発避難者の「切り捨て」。元号が変わったら、原発避難は現在進行形では無くなるのか。当事者でありながら支援活動も続けている避難者の想いを軸に、改めて考えたい。なぜ原発避難者支援が必要なのか。
【知事会見で淡々と「今後も支援する」】
今月1日。午前10時から開かれた県政記者クラブとの定例会見。まず、福島中央テレビの男性記者が「今日、新元号の発表がありますけれども、新しい時代への想いをお聞かせください」と尋ねた。「平成」に替わる新しい元号の発表を控え、記者クラブからの最初の質問もまた、「新元号に対する知事の想い」だった。知事会見までもが改元に伴う空虚な祝賀ムードに包まれた。
前日には、原発事故による避難指示が出されなかった区域からの避難者(いわゆる〝自主避難者〟)への家賃補助制度や、既に避難指示が解除されている5市町村(南相馬市、川俣町、葛尾村、飯舘村、川内村)からの避難者に対する仮設住宅の供与(みなし仮設住宅としての借り上げ住宅を含む)が打ち切られている。全国12カ所(山形、茨城、埼玉、東京、神奈川、京都)の国家公務員宿舎に身を寄せている避難者は退去を求められ、応じない場合は今月から2倍の家賃を請求される。福島県生活拠点課によると、3月26日時点で2倍の家賃を請求される避難者は約60世帯だという。
年度が変わり、様々な想いや事情で避難を継続する人は、本当の意味で〝自力避難者〟となる。避難指示区域の内か外かという、放射線防護の点では何ら意味の無い〝線引き〟も無くなる。それでも、原発事故避難者の住宅問題に関して質したのは河北新報一社だけ。内堀知事の回答も、用意したペーパーを読み上げるだけの無機質なものだった。
「国家公務員宿舎への使用貸付でありますが、2年間の経過措置として実施して来たものであります。経過措置後の例外的な措置として特別な事情のある世帯に限り延長する事としております。いまだ住まいを確保出来ていない世帯については、今後も戸別訪問等を通して一日も早く新たな住まいを確保出来るよう県として支援して参ります」
河北新報の記者は、引き続き国家公務員宿舎に入居し続ける避難者の数についても質したが、内堀知事は「具体的な部分については、担当部局に直接、聴いていただければと思います」と答えなかった。新元号や〝働き方改革〟に関して雄弁に答えたのとはあまりにも対照的な姿勢だった。東京五輪を軸とした「復興ムード」の中、「原発避難者対策はもう終わった話だ」。そんな想いが透けて見えるようだった。
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