地下鉄Bank駅から地上に出る。目前に広がるのは、銀行や証券取引所などが集まる世界屈指の金融センター「シティ・オブ・ロンドン」の街並みだ。
そこから歩いて10分ほどのところに、今回の舞台「オールド・ビリングスゲート」はあった。
(略)
2月中旬、そんなロンドンの中心へ、はるばる福島県からやってきた日本人がいた。
この場所で開かれたのは、化粧品ブランドLUSHが主催する「LUSH SUMMIT 2018」。同ブランドが商品の製造を通じて解決しようとしているあらゆる社会問題を発信するイベントだ。
メインステージでは、いくつかの講演やパネルディスカッションが行われたのだが、その中のひとつが『フクシマから7年:日本の原子力事情』をテーマとしたもの。福島県内で活動する3つの団体から6人が招かれ、福島の現状を世界へと訴えかけた。
ここでは、6人のうち特に細かく話を伺えた2人にフォーカスして紹介したいと思う。
左から平井有太さん、石丸偉丈さん。
多くの市民を巻き込みながら土壌の放射線量を測定し、結果をHP「みんなのデータサイト」で公開する活動を行なっている。
2年半をかけて採取したのは、なんと東日本3,400ヵ所の土。取り組みは、誰に強制されるわけでもなく、自らの意志によるものだ。
土壌1kgあたりにどの程度の放射能が含まれているか、そしてそれがどのように経年変化していくかを示した「放射性セシウム汚染100年マップ」の制作も活動の一環。
彼らの最大の目的は、東日本に広がる汚染状況を可視化することにある。
(略)
どちらかというと、自分たちの生活の安全のため。ちゃんと測ると、いわゆる『ホットスポット』は確実に存在しますから。
特に私たちのような大人ではなく、子どもを守る意味合いが強いです。土遊びだってするし、ちょうど砂埃を吸ってしまう背丈でもある。だからこそ、自分たちの生活圏内でどこが危険であるかをしっかりと把握する必要があります」
話を聞いていて、頭の中に「?」が浮かんだ。そもそも、そうした活動は政府が取り組んでいるわけではない?
「国や自治体による測定は『空間線量』だけでその基準も曖昧。チェルノブイリでも、ちゃんと土壌の測定がなされています。私を含めて活動しているみんなが素人ですが、土壌を測ることは本当に基本だと思っています。
確かに空間線量は目安にはなる。でも、風や雨の影響で結果は大きく変わります。とにかく私たちは土壌の汚染を把握したい。だから自分たちでやるしかないんです」
ショッキングな内容は続く。
「汚染された土が入れられたフレコンバッグというものが、街のいたるところに置かれている状況です。その数、1000万以上。ひとつあたり1トンの汚染土壌が入っていると言われていて、線量計を近づけるとものすごく高い数値を示します。
フレコンバッグは、子どもが遊んでいる公園のすぐ裏にも置かれていたりする。これが福島の日常なんです。本当の意味で汚染を取り除くことはできないので、そうやってどこかに集めるしか方法はないのかもしれませんが……。
とても根深く、解決まで相当な時間がかかる問題です」
(略)
海外でこうした情報発信をすることの意義をどのように感じているのか——。
「正直言って、一連の問題は日本ではすでに忘れ去られてしまっていると思います。
放射線量は測らなければ分からないし、情報に触れさえしなければ問題があるかどうかも分からない。見ようとしなければ見なくて済むんです。
そうしたことが、汚染がある福島県内でも起きつつあります。つまり、『発信したところでいちいち聞いてくれない』『もうこの問題を考えたくない』と。情報が飽和しすぎたのかもしれません。
でも、世界にはまだまだ情報が伝わっていない。国内のことだとあまり興味がなくても、海外のことであれば『へえ、そうなんだ』と思うことってありますよね?
外へ向けて一生懸命伝えていくなかで、結果的に日本の人たちにも知ってもらえたらいいなと思っています」
Featured Topics / 特集
-
A nuclear power plant in Byron, Illinois. Taken by photographer Joseph Pobereskin (http://pobereskin.com). カレンダー
-
Latest Posts / 最新記事
- Revealed: how a San Francisco navy lab became a hub for human radiation experiments via The Guardian 2024/11/26
- Australia declines to join UK and US-led nuclear energy development pact via ABC News 2024/11/20
- Australia mistakenly included on list of countries joining US-UK civil nuclear deal, British government says via The Guardian 2024/11/20
- 被ばく研究の灯は消さない 国や自治体が「風化待ち」の中、独協医科大分室が移転してまで続ける活動の意義via東京新聞 2024/10/05
- Chernobyl-area land deemed safe for new agriculture via Nuclear Newswire 2024/09/26
Discussion / 最新の議論
- Leonsz on Combating corrosion in the world’s aging nuclear reactors via c&en
- Mark Ultra on Special Report: Help wanted in Fukushima: Low pay, high risks and gangsters via Reuters
- Grom Montenegro on Duke Energy’s shell game via Beyond Nuclear International
- Jim Rice on Trinity: “The most significant hazard of the entire Manhattan Project” via Bulletin of Atomic Scientists
- Barbarra BBonney on COVID-19 spreading among workers on Fukushima plant, related projects via The Mainichi
Archives / 月別アーカイブ
- November 2024 (3)
- October 2024 (1)
- September 2024 (5)
- July 2024 (4)
- June 2024 (3)
- March 2024 (1)
- February 2024 (6)
- January 2024 (4)
- November 2023 (8)
- October 2023 (1)
- September 2023 (7)
- August 2023 (5)
- July 2023 (10)
- June 2023 (12)
- May 2023 (15)
- April 2023 (17)
- March 2023 (20)
- February 2023 (19)
- January 2023 (31)
- December 2022 (11)
- November 2022 (12)
- October 2022 (7)
- September 2022 (6)
- August 2022 (22)
- July 2022 (29)
- June 2022 (15)
- May 2022 (46)
- April 2022 (36)
- March 2022 (47)
- February 2022 (24)
- January 2022 (57)
- December 2021 (27)
- November 2021 (32)
- October 2021 (48)
- September 2021 (56)
- August 2021 (53)
- July 2021 (60)
- June 2021 (55)
- May 2021 (48)
- April 2021 (64)
- March 2021 (93)
- February 2021 (69)
- January 2021 (91)
- December 2020 (104)
- November 2020 (126)
- October 2020 (122)
- September 2020 (66)
- August 2020 (63)
- July 2020 (56)
- June 2020 (70)
- May 2020 (54)
- April 2020 (85)
- March 2020 (88)
- February 2020 (97)
- January 2020 (130)
- December 2019 (75)
- November 2019 (106)
- October 2019 (138)
- September 2019 (102)
- August 2019 (99)
- July 2019 (76)
- June 2019 (52)
- May 2019 (92)
- April 2019 (121)
- March 2019 (174)
- February 2019 (146)
- January 2019 (149)
- December 2018 (38)
- November 2018 (51)
- October 2018 (89)
- September 2018 (118)
- August 2018 (194)
- July 2018 (22)
- June 2018 (96)
- May 2018 (240)
- April 2018 (185)
- March 2018 (106)
- February 2018 (165)
- January 2018 (241)
- December 2017 (113)
- November 2017 (198)
- October 2017 (198)
- September 2017 (226)
- August 2017 (219)
- July 2017 (258)
- June 2017 (240)
- May 2017 (195)
- April 2017 (176)
- March 2017 (115)
- February 2017 (195)
- January 2017 (180)
- December 2016 (116)
- November 2016 (115)
- October 2016 (177)
- September 2016 (178)
- August 2016 (158)
- July 2016 (201)
- June 2016 (73)
- May 2016 (195)
- April 2016 (183)
- March 2016 (201)
- February 2016 (154)
- January 2016 (161)
- December 2015 (141)
- November 2015 (153)
- October 2015 (212)
- September 2015 (163)
- August 2015 (189)
- July 2015 (178)
- June 2015 (150)
- May 2015 (175)
- April 2015 (155)
- March 2015 (153)
- February 2015 (132)
- January 2015 (158)
- December 2014 (109)
- November 2014 (192)
- October 2014 (206)
- September 2014 (206)
- August 2014 (208)
- July 2014 (178)
- June 2014 (155)
- May 2014 (209)
- April 2014 (242)
- March 2014 (190)
- February 2014 (170)
- January 2014 (227)
- December 2013 (137)
- November 2013 (164)
- October 2013 (200)
- September 2013 (255)
- August 2013 (198)
- July 2013 (208)
- June 2013 (231)
- May 2013 (174)
- April 2013 (156)
- March 2013 (199)
- February 2013 (191)
- January 2013 (173)
- December 2012 (92)
- November 2012 (198)
- October 2012 (229)
- September 2012 (207)
- August 2012 (255)
- July 2012 (347)
- June 2012 (230)
- May 2012 (168)
- April 2012 (116)
- March 2012 (150)
- February 2012 (198)
- January 2012 (292)
- December 2011 (251)
- November 2011 (252)
- October 2011 (364)
- September 2011 (288)
- August 2011 (513)
- July 2011 (592)
- June 2011 (253)
- May 2011 (251)
- April 2011 (571)
- March 2011 (494)
- February 2011 (1)
- December 2010 (1)
Top Topics / TOPトピック
- anti-nuclear
- Atomic Age
- Capitalism
- East Japan Earthquake + Fukushima
- energy policy
- EU
- France
- Hanford
- health
- Hiroshima/Nagasaki
- Inequality
- labor
- Nuclear power
- nuclear waste
- Nuclear Weapons
- Radiation exposure
- Russia/Ukraine/Chernobyl
- Safety
- TEPCO
- U.S.
- UK
- エネルギー政策
- メディア
- ロシア/ウクライナ/チェルノブイリ
- 健康
- 公正・共生
- 兵器
- 再稼働
- 労働における公正・平等
- 原子力規制委員会
- 原発推進
- 反原発運動
- 大飯原発
- 安全
- 広島・長崎
- 廃炉
- 東京電力
- 東日本大震災・福島原発
- 汚染水
- 米国
- 脱原発
- 被ばく
- 資本主義
- 除染
- 食の安全
Choose Language / 言語
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)
政治家は今も昔も同じですね。
読み通すのは一頑張りが必要かも。