福島県外に残る汚染ごみ、処分進まず via 日本経済新聞

 東京電力福島第1原子力発電所事故により発生した汚染ごみ「指定廃棄物」の処分が福島県以外で進んでいない。福島県では最終処分場へのごみ搬入が2017年11月に始まったが、それ以外の5県にも最終処分場を造ることを目指した国の案は地域の反発を招き膠着状態だ。農家の軒先などに置かれたままのごみが今も各地に残る。

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事故直後、放射性物質が東北や関東などに拡散した。各地に残る放射性セシウム濃度が1キログラムあたり8000ベクレルを超える稲わらや下水汚泥、焼却灰は、指定廃棄物として国が管理している。農家の負担だけでなく自然災害で流出する懸念などもあるため、所管する環境省はできるだけ早く処分を進めたい考えだ。

指定廃棄物は11都県で、17年12月末時点で約20万3500トンに上る。全体の8割強を占める福島県では民間の産業廃棄物処分場を国有化した最終処分場(富岡町)への搬入が始まった。10万ベクレル超とセシウム濃度が特に高いごみを一時保管する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)も本格稼働した。

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栃木県では14年に北部の塩谷町が選ばれた。名水で知られる沢沿いの土地だ。これに対し町や地元住民は猛反発した。候補地につながる山道を塞いで調査に訪れた環境省職員らを追い返すなどの対応を取った。今も「白紙撤回を求める考えに変わりはない」(同町)。

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手詰まりな状況は他県も同じだ。環境省は少しでも処分を進めようと、セシウム濃度が基準を下回った場合、指定廃棄物の認定を解除して一般ごみとして処分できる新ルールを16年4月に設けた。解除すれば管理が国から市町村に移る。指定廃棄物の総量が減り、事態が進んでいるように見えるとの思惑もあった。

ところが最終処分場を造ることになっている5県で、このルールを用いたのは千葉市だけ。同市内の東電の敷地が最終処分場の候補地に選ばれていたが、解除することで「指定廃棄物がない千葉市には、最終処分場を造る理由はなくなった」(市長の熊谷俊人さん)と主張した。

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汚染ごみには指定廃棄物より汚染度が低いものもあり、各地で保管されている。宮城県では3月20日、白石市や角田市などの仙南地区でこうしたごみの試験焼却が始まった。農家が一時保管する状況の脱却が狙いだが、このごみですら住民の健康被害や風評不安を訴える声が強い。

汚染ごみはそのまま置いておけば放射線量が弱まっていく性質がある。放射能の強さが半分になる半減期はセシウム134が約2年、同137が30年。指定廃棄物の多い5県では、16年時点で半分以上が指定と認定される濃度基準を下回った。

これが「国や自治体が問題解決を先送りする誘因となっている」と元原子力委員会委員長代理である長崎大学教授の鈴木達治郎さんは指摘する。「最終処分場を造るよりも線量が下がった後に焼却する方が現実的だ」(栃木県の関係者)との声もある。

地域住民の放射能への不安と国への不信は根深い。県ごとに最終処分場が必要なのか含め、議論し直す時期に来ている。(安倍大資)

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