中国電力が上関原発建設を進めるために支払った漁業補償金を巡り、山口県漁協祝島支店(同県上関町祝島)の組合員会議議長が、書面議決書を配布して事実上の受け取りの是非を諮ろうとしたのに対し、受け取りを拒否する組合員2人が採決をしないように求めた仮処分申請で、山口地裁岩国支部(佐野義孝裁判長)は21日、「書面による採決は違法、無効」として開票作業を禁ずる決定を出した。申立人の弁護団の中村覚弁護士は「目的が達成できた。完全勝利」と語った。
決定などによると、今年5月に組合員会議があり、2016年度決算の赤字を補填(ほてん)するため組合員1人当たり12万円余りを徴収する「原案」に対し、一部の組合員から漁業補償金で穴埋めする「修正案」が提案され議論が紛糾し散会。支店は6月上旬、組合員に修正案を採決する会議開催の是非を問う書面議決書を配布した。
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決定後の記者会見で、申立人の橋本久男さん(65)は「ほっとしている。原発を止める運動の追い風になる」と話した。祝島支店の組合員の約8割が原案通り赤字の負担金を支店に支払っているという。
県漁協(本店・下関市)の村田則嗣常勤監事は、不服申し立てをするかなど今後の対応について「決定を精査して検討したい」と述べた。
祝島支店分の補償金約10億8000万円は、13年2月に無記名投票の結果、賛成多数で受け取りを議決したが、15年4月に配分案が否決され、県漁協が祝島支店分の補償金を預かっている。【土田暁彦】