原発労働者が語る「劣悪な環境でも、再稼働希望」偏らぬ事実、衝撃の肉声!via excite. ニュース

『原発労働者』(著:寺尾紗穂

シンガー・ソングライターであり、ホームレス支援フェス「りんりんふぇす」の主催者として社会運動家としての顔も持つ寺尾紗穂さんが、その名のとおり「原発労働者」に取材して執筆したルポルタージュである。原発という労働環境がどういうものか、ナマの声を聞くことで構成されている。

予想はしていたが、やはりひどい。詳細は野中幸宏さんのブックレビューを見てもらいたいが、これほど劣悪な労働環境が普通にあるのだ。奴隷制や身分制がある国の話じゃないぜ。今、日本にあることなんだ。

とはいえ、こうも思った。ここにレポートされた労働環境の半分は、原発だけに見られる風景じゃないんじゃないか。

たとえば本書には、協力企業(下請け孫請け曾孫受けを耳ざわりよく言い換えたもの)の労災隠しが書かれている。

労災を申請すれば、親会社である東電に伝わることになる。そこで、協力企業では、労災に当たる事故を隠すために、労働者に通常どおりのギャラを支払う。労災を受ければ6割だが、申請しなければ満額支給される。

どっちがトクかは明らかだ。かくして、この労災事故はなかったことになる。

[…]

印象的だったのは、著者と取材相手である原発労働者が、今後の原発のありようについて会話をするくだりである。

著者は原発に否定的な考えを持っている。しかし労働者は必ずしもそうではない。原発の新規建設は反対だが、今ある原発は稼働してもらいたいというのである。すなわち、彼は再稼働賛成なのだ。

[…]

脱原発/反原発を推進するなら、不都合な真実だ。原発が経済活性化におおいに役立っていたなんて認めたくない。人を助けていたなんて認めたくない。そう考えるのは人情だ。

にもかかわらず、本書はこの側面にしっかり触れたうえで、原発労働の実態を淡々とレポートしている。取材相手が再稼働を希望していることもしっかり書いている。ふれなくたっていいんだよ、こんなの。書かなきゃいいだけだ。

だが「あえて」ふれている。脱原発/反原発を推進するなら、この側面を無視しちゃいけない。著者は暗にそう語っているのだ。

じつは、本書でもたびたびふれられる東電はじめ電力会社の横暴も、ここに起因している。他に産業がない貧しい土地だからこそ、労働者は原発から離れられないのだ。[]

 

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