東芝が、子会社の米原子炉メーカー、ウェスチングハウス(WH)の米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)適用申請を検討していることに対し、WHが原発を建設中の米南部サウスカロライナ州で不安と反発が広がっている。原発建設に伴い同州では電気料金が大幅に上昇しており、WHが破綻すれば一段の値上がりにつながりかねないためだ。
「東芝の原発建設はギャンブルだった」「これ以上の電気料金上昇は許せない」。市民グループが7日、州都コロンビアの州議事堂前で抗議の声を上げた。同州は建設費用を原則的に電気料金に転嫁できる総括原価方式を採用。既に一部は転嫁され、2009年以降9回にわたる値上げで、料金の上昇幅は平均18%にのぼる。費用が膨らんだ分だけ料金が上がる総括原価方式に、中小企業商工会議所のフランク・ナップ会頭は「電気代が制御できないことに州民は憤っている。電力会社に白紙の請求書を渡すわけにはいかない」と話す。
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地元関係者によると、州内の不満を背景に発注元の地元電力会社とWHは15年、電力側が一定の費用を負担する半面、それ以降に発生する追加コストはWHが負担し、東芝が保証することで合意した。20年4月と20年12月の完成予定を守れなければ、東芝は一段のコスト増加で損失が膨らむ恐れがある。
東芝は地元との合意内容の見直しや破産法11条申請を通じた条件変更で、追加コストを電力側にも負担してもらうことを模索するが、同州政府担当局長のデュークス・スコット氏は「現行契約の維持が州民にとっての利益だ。変更に応じる理由はない」と容認しない考えだ。
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東芝が子会社のWHに米連邦破産法11条の適用申請を検討している背景には、米原発工事を巡って電力会社と締結した不利な契約を白紙に戻し、損失リスクを遮断する狙いがある。ただ、破産法申請にこぎ着けるかは見通せない状況だ。
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ただ、破産法申請のハードルは高い。WHはジョージア州のボーグル原発でも2基を建設中だが、地元州政府公共事業委員会のティム・エコール委員は破産法申請の検討について「ひどい選択肢だ」と強くけん制する。米政府もボーグル原発に83億ドル(約9500億円)の債務保証をしており、破産法適用となれば、外交問題に発展する恐れもある。
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