原発政策の責任者は党エネルギー環境調査会長の玄葉光一郎氏。先月末以降、調査会の会合で「原発ゼロ基本法案」のとりまとめや「30年の原発稼働ゼロ」といった案を相次ぎ提案し、党内論議を主導する。
旧民主党は野田政権の12年に、原発再稼働について(1)40年運転制限を厳格に適用する(2)原子力規制委員会の安全確認が前提(3)新増設はしない――の3原則の下で容認。一方で「30年代の稼働ゼロへ、あらゆる政策資源を投入する」との目標を決めた。
原発政策の見直しは蓮舫代表ら党執行部の意向だ。年明けの執行役員会で「30年代ゼロでは国民の評価を得られない。具体的な工程表を示すべきだ」との方針で一致し、3月の党大会での公表を玄葉氏に指示した。玄葉氏が唱える「30年代」から「30年」への変更は、廃止時期を最大で10年程度前倒しする案だとアピールできる。
原発立地県の議員からは「原発ゼロへの覚悟を示す必要がある」と歓迎の声が上がる。党幹部でも、維新の党出身の江田憲司代表代行が「現状では民進党は再稼働に反対だ。自民党との違いを歯切れ良く示す」と見直しに意欲的だ。
背景にあるのは「今の野党にとっては『脱原発』だけが選挙で有効な対立軸になる」(中堅議員)との判断だ。安全保障や歳出増を伴う政策で対立軸をつくりにくいのは旧民主党が実証済み。原発再稼働が争点となった昨年7月の鹿児島県知事選、同10月の新潟県知事選はいずれも再稼働に慎重な候補が勝利した。
新潟県知事選では民進党が自主投票とし、共産、自由、社民3党と足並みが乱れた。次期衆院選に向けても共通政策が調っておらず、候補者調整は宙に浮く。共産党の志位和夫委員長は9日の記者会見で「再稼働の是非は熱い争点だ。新潟県知事選を教訓に前向きの一致点ができればいい」と民進党への期待を示した。
一方、支持団体の連合の主力労組である電力総連は原発推進の立場で、党内には玄葉氏の案に「パフォーマンスだ」などと反発する声も根強い。9日の党会合では日立製作所出身の大畠章宏元幹事長が「過去に積み上げた議論を無視するのは無責任極まりない」と玄葉氏をけん制した。
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