ロンドンブーツ1号2号の田村淳に、日刊スポーツのさまざまな分野の記者が話を聞く連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」。今回は、9日に掲載した 「原発問題。都合の悪い歴史こそ残そう」について、淳が「話したいことがあります」として、日刊スポーツにやってきました。本来の予定を変更して、急きょ 前回のコラムについての思いを掲載します。
9日のコラムで、北茨城に行った翌日に鼻血が出た経験について話をしました。この鼻血の表現の部分について、不確定な要素がありながら誤解を招くような表現をしてしまったことについて、謝罪をいたします。
2011年3月に北茨城に行きました。帰った翌朝に鼻血が出ました。当時は、まだ「美味しんぼ」の話は出ていませんから、こんなに大量に鼻血が出 たのは、被災地での惨状を目の当たりにして興奮してたんだろうなと思っていました。14年になって「美味しんぼ」の鼻血の話題が出て、あの時のことを思い 出して、当時心配になった…という事が伝えたかったのですが、僕の言葉の選び方が未熟なせいで、因果関係がはっきりしていないことを因果関係があるように も感じられる表現になってしまった。そのことを、僕は謝罪したいから、あらためて場を設けてほしいと思いました。
前回の記事が出て、SNSを通じて相当の意見が来ました。意見も交換しました。ある方の「放射線は確かに怖いものです。しかし、事実に基づかない 偏見、差別、誹謗(ひぼう)中傷は人としてもっと怖く悲しい行動です」という言葉があって、この言葉が一番響きました…。僕は今回のことで自分の体を調べ 上げてもいないし、発信者として、多くの人に影響を与え得る立場の人間として…。僕の発言で、北茨城や福島の人に迷惑をかけてしまったとしたら、本当に申 し訳ありませんでした。
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除染については、僕は必要だからしているんでしょうと思っている。でも、意見をくれた人の中には「必要ない」という意見もあります。この議論って、 どっちが正しいのかどっちが間違っているという議論になりがちですよね。放射線がどこまでが安全でどこからが危険か。反対の人はずっと反対だし、心配な人 はずっと心配なんです。
だから、前回のコラムを読んでくれた方と対話をしていく中で、原発事故の問題ってそういう問題なんだということに気付かされました。ただ線量が高 いから除染すればいいって事じゃなくて、不安にかられている人、大丈夫だと思っている人の意見が入り交じって、物事が前に進まなくなっているのが、一番の 問題なんじゃないかと。
だいたいどんな問題も、議論したら落ち着くんですよね。お互いの意見をぶつけ合って、最後はなんとなく落ち着く場所が探せる。でも、日本が抱えてる問題や特に原発の問題に関しては、落ち着く場所がないんです。
ある人は、自分が調べた知識とか正しいと思った専門家に聞いて意見を提示する。反対側も同じように提示する。でも、これって、結果、誰がジャッジ するんだろうって思います。2011年の3月11日に事故が起きて5年。年月がたてばたつほど、議論はもっと入り組んで、大丈夫だという人と大丈夫じゃな いという人の出口のない論争が、ジャッジされないまま放置されていないか。もしかして、解決できない問題だから、国は時間がたって風化するのを待っている のでは?と思ってしまいました。
原発事故の問題って、メディアに出る人間は口をつぐむのが得策なんでしょう。賛成とか反対とか、言わない方が賢いかもしれない。そういう口をつぐ んでいる人が、自分が原発の問題どっちの意見の人間なんだろうと、一度自問自答してほしい。調べること、考えること、議論することをやめたら、風化してし まう。風化させないためにできる事は議論し続ける事なんだと思いました。
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