エネルギー政策 民意とずれては進まないvia西日本新聞

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既成事実を積み上げ、国民に仕方ないと思わせ、従わせようという戦術か。だが、原発をめぐる国民の合意ができないままでは、かえって行政の停滞を招かないか。
 ▼国民を惑わせる報告書
 「原発が抱える問題は安全性の他にもあるため、安全性を確認した原発の再稼働を進めるという考えは間違い」「原発は他の技術と比較して異次元の危険性を内包した施設であり、過去、安全神話に陥っていたことは問題」
 こんな文章があると思えば、正反対の考えを示す文章もある。
 「原子力は数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できることから、重要な選択肢となる」「古い原発の安全炉への転換をはじめ新増設・リプレース(建て替え)方針を明らかにすべきだ」
 前の二つは脱原発派だろう。後者は維持・推進派の見解である。
 経産省の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で先月27日に示された中間整理案にあった。
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経産省の本音は原発推進でも、少数派の意見は無視できないから報告書などでは両論併記となりがちだ。それを読む国民は具体的な方針どころか、対立し、分裂した内容に戸惑いを覚えてしまう。
 推進派にはこれでいいのかもしれない。議論を続ける一方で既成事実を積み上げていく。それは原発再稼働であり、原発を持つ電力事業者への支援策の強化である。
 深刻な事故が起きれば電力会社だけでは手に負えない。福島事故を見て、巨額の投資を長時間かけて回収する原発のリスクを電力会社はあらためて意識した。そこで、支援強化を国に求めている。
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温室効果ガスの主要排出国でありながら、削減目標の提出時期の見通しすら立たない日本に対し、国連の事務総長をはじめに早期提出を促す声が相次いだという。
 デンマークは2050年までに石油や石炭など化石燃料を使わない社会の実現を目指す長期ビジョンを掲げる。そのベースにあるのが与野党の合意であるという。
 ▼地域対立の原発よりも
 政権交代があっても、エネルギー政策の基本に変更がない安心感から、個人も企業も長い目で見た投資が考えられるというわけだ。
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原発政策を曖昧にして時を待つような姿勢では、世界の大きな流れに取り残されるのではないか。
 ところで、重い家計負担があってもなぜ、ドイツなどで再生可能エネルギーの普及が進むのか。有識者を集めた経産省の委員会の一つで面白いやりとりがあった。
 再生可能エネルギーを使った発電の主体が地域であり、住民が企業を組織してやるからだとの解説である。風力発電も地域住民で考え、計画して、自分たちの地域に建設するから反対も起きにくい。
 結果、再生エネの普及が進み、地域活性化にもなる。立地自治体と周辺地域との対立を生みやすい原発に比べると、どこにも可能性がある再生エネは夢がある。そう思う国民が多いのではないか。

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