<衆院選>指定廃棄物の福島集約 割れる見解 via 河北新聞

 14日投開票の衆院選で、河北新報社は宮城県内6小選挙区の立候補者20人と福島県内5小選挙区の立候補者16人を対象に、東京電力福島第1原発事故で発生した放射性物質を含む指定廃棄物の処理の在り方について聞いた。「他県の発生分も福島県に集約するべきか」を尋ねた結果、福島側は8割が「反対」と回答し、宮城側は意見が割れた。

◎宮城「1カ所現実的」声も

 指定廃棄物の最終処分場建設候補地として国が3カ所を提示している宮城県。自民候補の大半が「現行法の下で県ごとに処分場建設を」と訴えたのに対し、民主や維新など野党候補は福島県内での処分に言及。与野党で見解が割れた。
 候補者20人のうち、宮城県内での対応を挙げたのは自民4候補。
 候補地の一つ、栗原市が含まれる6区の前議員は、稲わらなど指定廃棄物の保管が長引く現状を懸念し「一刻も早く地域の不安を解消すべきだ」と答えた。2区の前議員も「福島県だけに押し付けるわけにはいかない」と強調した。
 福島での処分に触れたのは、民主、維新、次世代、共産の5候補。
 5区の民主前議員は福島県の了解を条件とした上で「県単位で処分場を造ることは難しい。県外の1カ所に集積するのが現実的」、2区の維新前議員は「福島の原発事故に由来する指定廃棄物はその敷地内での処分が適当」との見方を示した。
 ほかの回答は「徹底的にリスク管理できる場所を提示すべきだ」(1区の民主前議員)「(福島での処分は)慎重に判断したい。被災者分断と福島切り捨ては許さない」(3区の共産新人)など。[…]
◎福島8割、反対姿勢鮮明

 福島県の5小選挙区に立候補している16人中13人が、指定廃棄物の福島集約化に「反対」と答えた。党派や当選回数に関係なく、約8割が反対姿勢を鮮明にした。
 反対理由で最も多かったのが、「排出した県内で処理することは放射性物質汚染対処特措法の基本方針に定められており、法的に確認済みだから」(1区の自民前議員、3区の民主前議員など)との意見だった。
 5区の自民前議員や4区の維新前議員は「これ以上、原発被災地の福島県に負担を押し付けるべきではない」と主張。2区の自民前議員は「(集約化に)福島県の同意を得られる可能性はない」と指摘し、2区の民主新人は「これ以上、福島県民を傷つけないでほしい」と訴えた。
 福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設建設への影響を懸念する声もあった。5区の民主前議員は「(福島県への集約化は)重大な約束違反。これまで積み上げてきた中間貯蔵の話が全て壊れる」との危機感を示した。
 4区の社民新人は「1カ所に集めればさらに危険度が増し、福島県民の生活再建が遠のく」と答えた。回答で「その他」とした1区の共産新人は「福島で嫌なものを県外で受け入れるはずがない」と指摘した。
 「国策で進めてきた以上、国の責任で進めるべきだ」と主張する回答が党派を超えて目立った。

◎これ以上犠牲強いるな/東大大学院総合文化研究科高橋哲哉教授(哲学)
 福島県の候補の大半が福島への集約化に反対したのは当然だ。原発事故のダメージがあまりにも大きく、党派を超えて「これ以上、県民に犠牲を強いることはできない」との点で一致した。
 宮城県では、一般論として「福島へ押し付けることはできない」と言う候補は多いが、最終処分場候補地を抱える4区と6区の候補からは「福島集約化」や白紙撤回を事実上求める声が上がった。当事者意識の差が意見の差になっている。
 原発事故は私たちの繁栄が一部の人たちの犠牲の上で成り立っている「犠牲のシステム」を可視化した。原発の電気の恩恵を受けてきた以上、県ごとに最終処分場を造る特措法に従い、福島にこれ以上の犠牲を強いるべきではない。ましてや東京電力福島第1原発の恩恵を受けてきた関東地方の人たちが、福島集約化を主張するのは言語道断と言わざるを得ない。

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