東北電力が仙台市青葉区の電力ビル内で運営するホールで、美術家で宮城教育大准教授の村上タカシさんが、福島県内の土壌や土囊(どのう)袋を組み合わせた作品を展示しようとしたところ、ホール側から「不審物と思われる」として一時、撤去を求められたことがわかった。
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村上さんら日本とカナダのアーティスト8組が「中立の立場でエネルギーの未来を考える機会にしたい」と、「POWER TO THE PEOPLE」展を企画。被災地の電力会社施設での発信に意味があるとして、東北電力の広報・地域交流施設「グリーンプラザ」のホールを、7~19日の予定で借りていた。村上さんの作品は、黒の新品の土囊袋と太陽光パネルを並べ、少量の土や放射線測定器を置いたもの。土は福島県内で除染が終わったものだという。村上さんは「除染作業で出た土囊袋があちこちに置かれている福島の現状を切り取った」と説明している。
同展を企画した武谷(たけや)大介さんや、グリーンプラザの南幅(みなみはば)達也所長によると、搬入を終えた6日夕、プラザ側が「ホール前を通る不特定多数の方が不審物と思ってしまう」ことを理由に、撤去を要請した。武谷さんらが「表現の自由に反する」と拒んだところ、翌7日朝から、ホール入り口や通りに面した窓にシャッターが下ろされた。
武谷さんは作品に囲いをつけることなどを提案したが、プラザ側は別室に移した上で扉を閉め、室外に表示を出さないことを要求。協議を続けた結果、別室の扉にカーテンを下ろして外から見えないようにし、作者や作品名の表示は出すことなどで折り合った。
南幅所長は取材に対し、「市民に潤いと憩いを与えるというプラザ運営の趣旨にそぐわない」と説明。原発事故との関連については否定した。「村上さんがどんな作品を出すのかについて、主催者と打ち合わせが足りなかった」と言う。
武谷さんは「3日間展示を見てもらえなかったことには不信感を持つが、結果的には東北電力の理解に感謝している。市民がエネルギーについて考える場を今後も提供してほしい」。村上さんは「美術とは本来、心地よいものや人が不快に思うものなど多様性があるはずだ。東北電力の過剰反応だ」と話した。(石橋英昭)
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