【ビキニ被ばく60年】第2部:漂う「当事者」(6)福島分断する賠償金問題「ふるさと取り戻す」via 神奈川新聞

 「悲しいことに福島県民間の分断が、賠償や除染が進まないことで起きている。福島から逃げた人が戻ってきたら『おまえたちは裏切り者だ』と言われたという話もあった」

4月20日、広島、ビキニ事件、福島の3人の核の被害者が実体験を紹介した「ビキニ被災60周年・三浦市民集会」(三浦市三崎)で、福島市在住の穂積順子(34)は神妙な面持ちで語った。

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住民同士のいざこざの根本に、穂積は被災者の賠償金問題を挙げる。「避難地域に指定されている限りは1人につき月10万円の賠償金が入ってくる。福 島県はみんな被害を受けたのに、『なんであの人たちだけもらえて(避難地域外の)自分たちはもらえないのか』と思うみたいです。でも憤りの矛先が違う」

同県楢葉町から避難した40代の男性は、家族といわき市の仮設住宅で暮らす。「国は(避難者を自宅に)戻そうとしているが、信用できない。国にしてほしい ことは、原発20キロ圏内の土地を全部買い上げること。俺たちを追い出したんだから。そうしたら『補償金額が区域によって数千万円単位で違う』という話で 分断されることもない。結局、最後はお金の話なんだよ」と本音を吐露した。

遠く離れたマーシャル諸島では1954年3月の米国による水爆実験の影響で、爆心地に近いロンゲラップ島民は故郷を追われた。放射線の後遺症などを恐れ、大半は「帰りたい」と願いながらもためらう。ただ、島民間でも賛否両論が噴出している。

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一方で、国が4月から県内の一部で避難指示を解除したことに懸念を示す。除染の問題以上に「病院などのインフラ整備が全然進んでいない所がたくさんある。賠償金を打ち切りたいばかりに、一刻も早く警戒区域をなくしたいという考えではないか」と疑問を呈す。

晩発性の甲状腺障害など、低線量被ばくに対する健康管理についても懸念がある。福島県内では今、助成で子ども医療費が18歳まで無料だ。しかし、3年前の 震災時に15歳だった少年少女は、今後は適用外となる。「県では限界があり、国の事業としてやってほしい」と主張する。

唯一の被爆国である日本は、広島、長崎に続き、第五福竜丸や三崎港を拠点にしたマグロ漁船なども多数被害を受けたビキニ事件、そして福島の原発事故を経験した。

「核と人類は共存できないことを一番分かっているはずなのに、なぜ原発政策をこれほど推進してきたのか。安心して住める福島を取り戻すには100年、200年かかるかもしれない。それでも、ふるさとを取り戻す闘いを諦めるわけにはいかない」 =敬称略

全文は第2部:漂う「当事者」(6)福島分断する賠償金問題「ふるさと取り戻す」

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