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高島裁判長は判決理由で、原爆投下直後の調査に基づいた特例区域は「混乱期に収集された乏しい資料に基づいた概括的な線引きにすぎない」と指摘。正確な降雨域を明らかにすることは困難とした上で、原告側が提出した気象学者や大学教授の調査などから「黒い雨は特例区域にとどまるものでなく、より広範囲で降った」と認めた。
その上で、黒い雨に放射性微粒子が含まれ、直接浴びる外部被ばくのほか、混入した井戸水や食物の摂取で内部被ばくが想定できると指摘。原告らの被害主張は信用でき、提出された診断書などから「原告らは黒い雨の影響を受け、原爆による特定の病気にかかった」と認め、被爆者援護法が「原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と定める3号被爆者に該当するとした。
被告側は「黒い雨による健康被害は科学的に証明されていない」と反論したが、判決は、黒い雨に関する知見が十分に蓄積されていない時点で特例区域の制度が設計された経緯などを踏まえ「本件でのみ、科学的、物理的根拠を重視するのは相当ではない」と退けた。
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