中側恵一
命や生活に関わらないようながんを早期に発見する「過剰診断」が国レベルで進んでしまったのが韓国の甲状腺がんです。
1999年から始まった国主導のがん検診で、乳がん検診のオプションとして、甲状腺がん検診も受けられることになりました。すると、甲状腺がんの発見が急増し、約20年で患者数が15倍にまで増え、2012年には女性のがんの約3分の1が甲状腺がんとなりました。一方、甲状腺がんによる死亡率は全く下がりませんでした。
韓国でも、14年ごろから、科学者が甲状腺がんの過剰診断に対して警鐘を鳴らし、マスコミも大きく取りあげました。「アンチ過剰診断」と言えるキャンペーンが進んだ結果、甲状腺がん検診の受診者数はピーク時から半減し、発見数も激減しています。ジェットコースターのようなアップダウンです。
ほとんどの小児甲状腺がんは「死に至る病」ではありません。韓国や神経芽細胞腫の例を踏まえ、福島の小児甲状腺がん検診を見直す時期に来ていると思います。
韓国の場合、対象は小児ではなかったことを筆者は知らないのか、無視しているのか。
この類いの議論が根強く繰り返されるのは残念というだけでは済まない。