東京電力福島第1原発事故の避難者らが国と東電に慰謝料などを求めた集団訴訟は、これまでに10地裁で一審判決が出され、国の責任をめぐって判断が分かれた。年内には、初めての控訴審判決が仙台高裁で言い渡される予定で、一貫して事故の責任を否定する国の姿勢が、高裁レベルでどう評価されるか注目される。
原発事故については、電力会社が過失の有無にかかわらず賠償責任を負う原子力損害賠償法の規定があるため、東電の支払い義務は全ての判決で認められている。
一方、国の賠償責任は6件で認められ、4件で否定された。主な争点は▽事故原因となった津波を国が予見をできたか▽対策を取って事故を回避できたか―の2点。原告側は、2002年に示された政府機関の地震予測「長期評価」に基づき、国が規制権限を行使して東電に対策を取らせれば事故は防げたと主張してきた。
前橋など6地裁は長期評価の信頼性を認め、「津波対策として考慮すべきだった」と指摘。国が電源設備の高所移設といった対策を東電に命じなかったのは違法として、国の責任を認定した。一方、千葉地裁は津波被害の甚大さなどから「対策したとしても事故を回避できなかった可能性がある」として、1、2陣の訴訟いずれも国の責任を否定した。
ただ、同様に責任を否定した名古屋、山形両地裁を含め、「国が津波を予見できた」ことは全ての判決が認めた。原告数が最も多い福島訴訟の代理人、馬奈木厳太郎弁護士は「事故が起これば、地域住民の生命が脅かされる。『何としても原発を守る』という前提に立てば、津波を予見した時点で国が規制権限を行使すべきだ」と指摘する。
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