/2 原発の影 予断許さぬ、離島挟み撃ちvia毎日新聞

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船も不足、逃げ場は

 東京電力福島第1原発事故を受けて原発の停止が相次いだころ、森田さんが上関原発反対を長年訴えてきたことを知る人から「おまえの勝ちじゃの」と声を掛けられた。原発が止まると感じたらしい。しかし、結局原発廃止は進まず、新基準に基づいて伊方原発は全国で3番目に再稼働。上関原発も、準備工事は中断したものの、建設に必要な埋め立て免許が更新され、予断を許さない。

 「離島と原発の関係は特殊です」と森田さん。東電原発事故では40キロ以上離れた住民も避難させられた。2014年に大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決も、250キロ圏内に住む人の生活が脅かされる危険性を認めた。

 現在の島の住民は二つの集落で計約380人。戦後最盛時の約10分の1にすぎないが、島民全員が乗る船は港にはない。事故時に伊方原発側から風が吹けば、救援船が来ても避難先の本土もまた風下に当たる。事実上、逃げ場はない。

 森田さんは「長島の自然を守る会(現・上関の自然を守る会)」のメンバーだ。現地の山口県上関町での抗議や選挙の手伝いに足しげく通った。守る会の趣旨は開発に伴う自然破壊を食い止めること。原発周辺の自然を調査する地道な活動に力を入れ、カンムリウミスズメ、スナメリなど希少生物の生息を明らかにしてきた。

原告は希少種

 08年に森田さんも原告に加わって起こした原発予定地周辺海域の埋め立て免許取り消し訴訟では、こうした生物の名前を原告として訴状に記載した。従来の反原発訴訟は憲法が保障する人格権や人の生存権を救済根拠としてきたが、それにとどまらず、生き物を代弁して「自然の権利」を主張したのだ。訴えは注目され、全国から支持者が集まった。

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 ◆ノート70年

原発差し止め4件、人格権侵害の危険認定も

 原発の周辺住民が設置許可取り消しや運転差し止めなどを求めた訴訟では「(司法審査は)行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行う」という判断の枠組みが踏襲されている。最高裁が1992年、四国電力伊方原発1号機訴訟の判決で示した。

 司法審査の対象が限定され、住民側敗訴が相次ぐ中、2006年以降の(1)北陸電力志賀原発2号機訴訟の金沢地裁判決(2)関西電力大飯原発3、4号機訴訟の福井地裁判決(3)同高浜原発3、4号機仮処分の福井地裁決定(4)高浜3、4号機仮処分の大津地裁決定--の4件は運転を差し止めた((1)(3)はその後住民側敗訴)。(2)では、日本の法制下で人格権を超える価値は見いだせず、生命を守り生活を維持する利益は人格権の根幹とした上で、原発の運転によって、それが侵害される具体的な危険があると判断した。

ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170121/ddl/k39/040/553000c#csidx12873cd83b4a49483cd0b4eb1613876
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