元京都大学原子炉実験所助教 小出 裕章 氏
チェルノブイリのように石棺で封じ込めるしかない
小出 廃炉にするために、原子炉格納容器に水を溜めて強すぎる放射線を水で遮り、溶け落ちた核燃料をつかみ出す方法が検討されています。しかし格納容器そのものが壊れていて水が漏れており、いくら水を入れても格納容器に水が溜まりません。破れている穴を修理するにも放射能が強すぎて調べられず、9年経ってもどこが壊れているのかわかっていないのではないでしょうか。
上から取り出す方法は技術的に難しく、格納容器の横に穴を開けて核燃料を取り出す方法が今は最有力です(図2)。しかしそうすると膨大な被爆作業になり、30~40年経っても横から溶け落ちた核燃料を取り出すことはできないと考えています。
溶け落ちた燃料を取り出すため、作業ロボットの開発も進められてきました。ロボットが動くプログラムを載せたICチップは放射線に弱く、強い放射線を受けると指示通りに動かなくなります。いまだに現場作業までたどり着けていません。ロボット作業ができないことも、作業が進まない原因です。
4号機は、使用済燃料プールから核燃料を移していますが、1~3号機の使用済燃料プールはいつ崩壊するかわからない状況です。今より深刻な汚染が起こるリスクがあるため、使用済燃料を早く安全なプールに移すことが必要ですが、1~3号機はほとんど手がつけられていません(表1)
「絶対壊れない」想定から「想定外」事故に
――なぜ想定外の事故が起こったのでしょうか。
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発電所がすべて停電し、原子炉格納容器が壊れるケースまでを想定すると、原子力発電所はできなかったからではないでしょうか。一方で、やはり事故が起こるとリスクがあることがわかっていたから、電力大消費地の首都圏から離れた場所に建設しています。
太平洋戦争でも、戦争に勝てると考えている人ばかりではなかったでしょう。原子力発電も、なかには危険性に気づいていた人もいたかもしれません。しかし国がレールを敷いて流れがつくられると、太平洋戦争のようにほとんどの人は抵抗できないのだと感じました。
(つづく)
【石井 ゆかり】