(独)国立病院機構 北海道がんセンター 名誉院長
「市民のためのがん治療の会」顧問 西尾正道
はじめに
前編では福島原発事故後の政府・行政のデタラメな対応を中心に報告したが、 本編では内部被曝の問題と、今年の夏頃に処分方法を最終決定するとされているトリチウムを含む汚染水処理の問題について報告する。 なお内部被曝の本態ともいえる放射性微粒子の問題は当会のホームページ上に掲載した【がん治療の今 > No.287 20160830】『放射線の健康被害を通じて科学の独立性を考える』 http://www.com-info.org/medical.php?ima_20160830_nishio を参考として頂きたい。 またトリチウムの健康被害の問題に関しては、【がん治療の今 > No.380 20181211】『トリチウムの健康被害について』 http://www.com-info.org/medical.php?ima_20181211_nishio も参考として頂きたい。 また本稿における資料の図表は講演のため作成したスライド原稿をそのまま使用し掲載することをお許し願いたい。 また「被爆」、「被曝」、「被ばく」の記載は本来区別すべきであるが、本稿では多くの場合は微弱な慢性的な被ばくとなる内部被ばくを論じることから、「被曝」で統一する。 内容的には紙面の都合で、放射線の健康被害に関しての基礎的な知識は保有しているとして論を進めさせて頂くことをお許し願いたい。
1.内部被曝を軽視・隠蔽する歴史
最近の週刊朝日2020年3月13日号で3号機は核爆発であったとする藤原節男氏の記事が掲載されていが、9年経過して初めて大手のジャーナリズムで報道された。 資料1は藤原氏のメール情報から引用した写真を合成して作成したものである。
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水素爆発ではなかったため、事故翌日のネット上ではハワイなど各地でプルトニウムやウランが大量に検出されていた。 このため放射性微粒子がプルームに乗って東北・関東地方にも拡散した。この放射性微粒子の体内取込みこそが内部被曝に繋がることとなる。
この場合は核種の科学的特性や半減期やエネルギーの違いによって人体に種々の影響を与える。 すなわち内部被曝の人体影響は一言で言えば、「長寿命放射性元素体内取込み症候群」なのである。
こうした放射性微粒子の体内取り込みによる健康被害は深刻なので、原子力ムラの人達は逆に隠蔽する必要が生じる。 まず歴史的な経緯を含めこの内部被曝の深刻さを隠蔽する歴史的経緯を資料2に示す。
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