サビた排気筒、林立するタンク…福島原発の今 via 日本経済新聞

竹田 忍

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何重もの保安検査を経て、福島第1構内に足を踏み入れた。廃炉作業が進む1~4号機がよく見える高台に上がった。炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機の格納容器内部に残る溶融燃料(デブリ)取り出しが廃炉作業の最難関だ。2021年に2号機から取り出しを始めると決めたが、デブリの正確な量やたまっている場所は依然として把握できていない。

1号機は壊れた天井クレーンの放射線量が高くて撤去できず、作業の進行を阻んでいる。3号機は建屋の上に円柱を半割りにしたような屋根を取り付け、使用済み燃料の取り出しを進めている。事故当時、定期検査中だった4号機は原子炉内に燃料はなく、使用済み燃料プールに1535本の燃料があった。東京タワーとほぼ同量の鋼材4000トンで巨大な鋼製架台を建屋の隣に建て、使用済み燃料を全部取り出した。

2号機の真正面に立った。建屋との距離は約100メートル。全身を覆う防護服ではなく薄手のベストを着用し、胸ポケットには線量計を入れた。あとは通常の工場見学と大差ない。敷地内の96%は一般作業服で作業・移動ができるようになった。線量が高い海側のがれきを撤去し、露出した地表にモルタルを吹き付け、厚さ約5センチの鉄板で覆うなどの対策が効いた。

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構内には白と水色の巨大なタンクが林立する。容量は1000~1300トンで一部は2000トンある。11月末時点で約980基。デブリの冷却で生じた汚染水を多核種除去装置(ALPS)に通して放射性物質を除いた処理水が中身だが、除去しきれないトリチウムを含む。22年夏にはタンクで敷地がいっぱいになる。処理水の海洋放出も検討されているが、漁業関係者や近隣国の反発は根強い。

資源エネルギー庁によると、汚染水の発生量は14年5月時点で日量540トンだったのが、18年度には同170トンと3分の1になった。地下水流入で汚染水がかさ増しされるのを減らしたからだ。長さ約30メートルの凍結管約1500本を埋設、マイナス30度の冷媒(塩化カルシウム)を流し周囲の土を凍らせた壁で地下水を遮る。担当者は凍土壁を「巨大なアイスキャンディーをびっしり並べたようなもの」と表現した。凍土壁の配管最上部には真っ白な霜が付いていた。

これまで汚染水や処理水の取材は欧米メディアが多かった。9月に韓国が国際原子力機関(IAEA)総会で日本の汚染水問題を批判した関係もあってか、「最近は韓国メディアの取材が増えている」と東電の木元崇宏・廃炉コミュニケーションセンター副所長は語る。

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福島第2原発はメルトダウンを免れた。4系統ある外部電源のうち1系統が津波後も生き残り、交流電源設備が使用可能だったからだ。だが倒壊した送電鉄塔や津波をかぶり砂まみれで放置されている電源盤を見ると間一髪だったことがうかがえる。

事故発生から8年9カ月。現場を訪れて原発という巨大技術の制御の難しさを、改めて思い知らされた。

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