【県民健康調査】誰のための委員会?何のための議論?「事故との因果関係否定」に反対続出も、星座長は早期決着に固執。会見も打ち切り、県民は「任期や時間より徹底した議論を」via 民の声新聞

【尽くされぬ議論、遁走する座長】
 17時を過ぎると、星北斗座長(福島県医師会副会長)はしびれを切らしてリュックを両腕で抱え始めた。撮影されている事などお構いなし。一刻も早く家に帰りたくてランドセルを抱える小学生のような振る舞いに、記者席からは失笑とため息が漏れた。
 まるで駄々っ子のような人物が「座長」として君臨する県民健康調査検討委員会。座長としての采配の根底にあるのは、「県民ファースト」ではなく自身の都合や感情なのだろう。果たしてこれで、原発事故で被曝を強いられている福島県民の健康問題を議論する事など出来るのだろうか。
 まだ記者会見は続いている。記者は質問しようと挙手をしている。座長の想いを忖度した福島県職員が強引に記者会見を閉じた。新幹線で郡山に戻るのだろうか。まるで会場から逃げるように、星座長は一目散に福島駅に向かった。呆気にとられる記者や傍聴者を尻目に、県職員は後片付けを始めた。これが、原発事故後の県民の健康について話し合う委員会の現実だった。 
 委員会には様々な団体から意見表明や要望書が寄せられている。成井香苗委員(臨床心理士、NPO法人ハートフルハート未来を育む会理事長)が「委員会として返事をしなくて良いのか」と質したが、「皆様(各委員)に回覧するという事で、必要に応じてこの場(委員会)で発言していただくという取り扱いを前々からさせていただいております。前にも同じご回答を申し上げましたが、頂きましたものにつきましては、皆様にご回覧申し上げて、ここでの発言に反映していただくという事をもって委員会として受け止めるという事です」と一蹴した。各団体が切実な想いで要望書を提出しても、メールに添付されて回覧するだけ。春日文子委員(国立環境研究所特任フェロー)も「県民に丁寧に説明していく、真摯に向き合っていくメカニズムを考えていただきたい」と発言したが、星座長は「はい、ありがとうございます」と答えたにとどまった。

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【「腑に落ちない」「申し分ない」と紛糾】
 委員会が開かれたホテルの入り口には、危機感を抱いた県民たちが「私たちの声を聞いてください」、「疑問だらけの結論でいいの?」、「甲状腺検査は誰のため?」、「甲状腺ガン 原因あいまいなまま結論だすな」などと書かれたプラカードを掲げていた。この日の会合には重要な議題が出されていたからだ。
 6月3日に開かれた「甲状腺検査評価部会」。ここで話し合われた「甲状腺検査本格検査(検査2回目)結果に対する部会まとめ」は、2014~2015年度に実施された検査で「悪性ないし悪性疑い」と判定された71人について、「現時点において、甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」と結論づけた。
 原発事故当時の年齢、二次検査時の年齢が高いほど発見率が上がった点がチェルノブイリ原発事故と異なる事、発見率を単純に4地域(避難区域等13市町村、浜通り、中通り、会津地方)で比較すると差があるように見えるが、検査実施年度や先行検査からの検査間隔など多くの要因が影響している事、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が推計した甲状腺吸収線量を使った解析では、放射線量の増加に応じて発見率が上昇する一貫した関係が認められなかった事─が根拠とされている。
 星座長はこれも、あっさり認める腹積もりだったのだろう。しかし、真っ先に異を唱えたのが成井委員だった。

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【「結論は変えず表現改める」】
 星座長は「委員会として文面は受け取る。文面については一部誤解を招かないように修文する。修文内容については春日委員の発言その他を参考にしながら私に一任いただくという事でよろしゅうございますか」と議論を打ち切った。春日委員が「修正後の文案を一度、委員に(示して欲しい)」と遠慮がちに発言すると、星座長は「信用されてませんね。信用されてない事が良く分かりましたので、皆さんに回覧します」と返した。
 しかし「一任」されたのは、あくまで修正案の作成だけだ。閉会後の会見で、星座長は「全会一致になるか分かりません。皆さんからのご意見をいただいたうえで御報告させていただきます」と述べた。
 成井委員は「私は一任したとは考えていません。みんなの意見が提出されたものを踏まえて、もう一度推敲されるのだろうと思っています。もし多数決で決めるのだとしたら各委員の賛否を示すのか…」と発言。富田委員も「座長に取りまとめを一任するのは当然だと思っておりますが、最高裁の判決と同じように少数意見を付記する事になるだろうと思います。結論が出ないままずるずる行くのはまずいですから、多数決でも何でも決めなければならない。ただし、少数意見は尊重してもらわなければならない。私は『少数意見』だと思いますが」と述べた。清水委員は「自分の意見を述べただけであって、座長がきちんと取り入れてくれたと思います。それは評価部会でしっかりと討論して、結論を出すのだと思います」と応えるにとどまった。
 星座長は会見で「基本的な結論の方向は曲げなずに、誤解を招かないような表現に改める」と話し、原発事故との因果関係を否定する方向性には変わりないとの姿勢を改めて示した。「急いでいるわけでは無いが、私の任期が今月31日に切れる。任期中に委員会に報告されたものについては、任期内に整理して皆様にお知らせするのが私の務めだと思うからそうする」とも述べ、今月末までに決着させるとの考えを繰り返した。
 ある委員は取材に対し、「星座長の取りまとめる文案なんて方向性が決まっているようなもの。提示された文案に対する議論はどこでやるのか。メールでのやり取りで一致出来れば良いけれども、紛糾したら改めて委員会を開催しなきゃ駄目ですよ」と話した。福島県民が望んでいるのは拙速な議論での因果関係否定か。それとも時間を惜しまぬ議論か。答えは明白だろう。

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