東電のトラブル再び、福島第1の廃炉態勢の再点検を via 日本経済新聞

科学記者の目 編集委員 滝順一

東京電力福島第1原子力発電所は、炉心溶融を起こした原子炉格納容器内の様子が少しずつ見え始め、これから正念場の溶融核燃料(デブリ)取り出しに向かおうとしている。その大事な時期にトラブルが目立つ。3号機の核燃料取り出し機構の不具合と、タンクにためた多核種処理水(トリチウム水)に関する説明不足だ。汚染水を海に流出させて強い批判を浴びた数年前の状況を思い起こさせる。

3号機の屋上にはかまぼこ型のドームが載っている。3号機プール内に残る566体の核燃料集合体(うち使用済みが514体)を取り出すための作業空間がつくられた。

エレベーターで地上36メートルの作業床まで昇ると、地上に比べ放射線量は高い。隣接するタービン建屋の屋上に残るがれきなどから放射線を浴びるからだ。また作業床はもともとのオペレーションフロア(オペフロ)から6メートルほど高い。オペフロはがれきを撤去し除染したものの、なお汚染があるため、架台を組んでその上に新たな作業スペースを設けた。

東京電力によると、ドーム内での被曝(ひばく)は毎時1ミリシーベルト程度で1、2時間は作業可能な環境だという。ドームの内外には鉛シート入りの壁に守られた待機場所が設けられている。作業員が待ち時間の間に不要な被曝をしない配慮だ。

燃料取りだし装置を動かしてみて安全かどうかを検査していた8月上旬、異常を知らせる警報が鳴って装置が停止した。調査の結果、装置自体には異常はなく、遠隔操作するため装置に信号を送る制御ケーブルの一部に雨水が浸入して配線が腐食していたことがわかった。ケーブルは防水仕様のはずだった。

5月にはキャスクをつり下げて移動させるクレーンの制御盤が壊れた。一連の装置群は米ウエスチングハウス・エレクトリック製で、電圧が高い米国で製作し動作確認をした後、設定を日本の電圧に変更して納入することになっていたが、この制御盤では設定変更がされていなかったという。

ともに素人でも原因が理解できるレベルの単純ミスが原因だ。東電は廃炉にかかわる設備の品質管理を徹底するとしている。

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処理水は溶融原子炉の汚染水を多核種除去設備(ALPS)などで浄化し、どうしても分離しきれないトリチウム以外の放射性物質は除去した水だと説明されてきた。そこにストロンチウム90やヨウ素129などの放射性物質が残留していた。どれほど高性能なフィルターを使っても残留物質を完全にゼロにするのは不可能かもしれない。しかし「トリチウムだけが残る」と説明する以上はその他の残留物質は測定限界以下であろうと普通は考えるだろう。実際、処理水の扱いを話し合ってきた当事者である資源エネルギー庁の小委員会にもそう思い込んでいた委員がいた。

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