原発被災地「土地の記憶失われる」 作家2人福島を歩く via 朝日新聞

長崎原爆をテーマに書いてきた芥川賞作家で、被爆2世でもある青来有一さん(58)が今月初旬、東日本大震災から6年になるのを前に、東京電力福島第一原発のある福島県大熊町を訪ねた。津波や原発事故の被害に遭った人たちの苦悩と、被爆者が背負ってきた苦しみとを重ねた。

青来さんは朝日新聞が19日に長崎市で開くシンポジウムで、3・11後に福島県南相馬市に移住した作家の柳美里さん(48)と対談する。訪問は2人の「顔合わせ」を兼ねたもので、柳さんも、ともに歩いた。

「ここから向こうは全部、中間貯蔵施設の予定地です」。全域に避難指示が出たままの大熊町。震災前に町でナシ農家を営み、現在は同県須賀川市に避難している鎌田清衛さん(74)が、一時帰宅に向かう車内で同行した2人に告げた。国は大熊、双葉両町の1600ヘクタールに、汚染土など除染で出た廃棄物中間貯蔵施設を建設する計画だ。

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郷土史家でもある鎌田さんは町内の海渡(みわたり)神社も案内した。鎌田さんは震災前、神社である発見をした。春分と秋分の日、町にある日隠山のちょうど山頂に夕日が沈むのだ。鎌田さんは施設の予定地にある神社の保存を求めている。

青来さんは神社に立ち、鎌田さんの「残したい」との思いがわかった気がした。「土地の記憶が失われると、その土地がその土地でなくなってしまう」

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「慰霊すべき場所が中間貯蔵施設になってしまう。倫理の行き止まりのような気がする」と柳さん。県内各地には除染廃棄物を入れた袋が山積みだ。それがなくなるのは地元にとって望ましいが、行き先が大熊町というのが釈然としないという。青来さんも「非常に微妙な問題」と応じる。「誰かの大事な場所が潰される。復興ばかり優先すると記憶が消えていく」

■「ずっと背負っている」

長崎では一昨年、原爆の悲惨さを世に伝えてきた「黒こげの少年」の写真を見て、「兄だ」と名乗り出た姉妹がいた。被爆から70年たっても抱え続ける家族への思いを、青来さんは今も残りの遺骨を捜す紀夫さんに重ねた。「自分の心をどう扱ったらいいかわからない。それがずっと続く」

汐凪さんの捜索は、柳さんの知人の南相馬市の男性も手伝っている。男性自身、家族の遺体を捜し続けている。柳さんは「彼もずっと背負っている」。

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■長崎で対談へ

柳美里さんと青来有一さんは、19日に長崎市長崎原爆資料館で開かれるシンポジウム「『あの日から』をつなぐ」(朝日新聞社主催)で、「『あの日から』の記憶 福島・長崎」と題して対談する。被爆者らの体験を伝えている朝日新聞長崎県内版の連載「ナガサキノート」が3千回を超えたことに合わせて開くシンポジウムで、被爆者被爆2世、学生らによるパネル討論などもある。

問い合わせは朝日新聞長崎総局(095・822・1231)。

全文は原発被災地「土地の記憶失われる」 作家2人福島を歩く

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