東京電力福島第1原発事故の被災体験を紙芝居にし、全国各地で語り継いでいる浪江町の住民らの団体「浪江まち物語つたえ隊」が、東電社員に紙芝居を上演する活動を始めた。「被災者の苦しい思いを心に刻んで、安全な廃炉作業につなげてほしい」と願いを込める。
「原発さえなければ、放射能さえなければ、俺たちだって救助活動に参加できたんだ」。昨年12月、福島市の東電福島復興本社。語り部の岡洋子さん(56)が方言を織り交ぜ、事故によって津波後の捜索活動中断を余儀なくされた浪江町の消防団員を演じる。約40人の東電社員はメモを取ったり、険しい表情を浮かべたりしながら見入った。紙芝居の題名は「無念」で、消防団員の悔しさや苦悩を実話に基づき描いた。
福島復興本社福島原子力補償相談室の板花洋さん(44)は「『原発のせいだ』という言葉が胸に刺さった。被災者の当時の苦しみを忘れず、仕事をしたい」と話した。東電社員への読み聞かせは、紙芝居の絵を手がけた広島市の福本英伸さん(60)が昨年9月に第1原発を視察した際、東電幹部に提案したことをきっかけに始まった。
3万人を超える東電社員全員への上演を目指しており、岡さんは「紙芝居を見てもう一度襟を正してくれれば、伝える意味がある」と話している。