東芝の米国での原発事業の損失額が七千億円規模に膨らむ恐れが出てきた。背景には、原発をめぐる当局の規制は米国でも年々厳しくなり、対応するための経費(コスト)が膨らんだ影響がある。昨年十一月に米大統領選でトランプ氏が勝利した後、円安ドル高が進んだことなども東芝の損失額を押し上げた。 (伊藤弘喜)
米原子力エネルギー協会(NEI)によると、原発の建設から運転、維持などすべてを合わせたコストは、二〇〇二年から一五年までの間に26%上がったという。
東芝は〇六年に米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を買収したが、事故やテロに対し米規制当局が求める安全対策は厳しくなる一方で、これが原発事業のコスト増につながった。さらに一一年の東京電力福島第一原発事故以降は「日本の教訓に学べ」と、米当局は電源喪失の対策や排気設備の強化なども追加要請してきた。
上がる一方のコストに音を上げ、原発閉鎖を決める企業が出てくる中、「シェール革命」と呼ばれる採掘技術の向上が進んで天然ガスの価格が下落。これに伴い電力の卸売価格も下がり、東芝の米原発事業はさらに苦しい状況に追い込まれた。
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