[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。今回ピックアップしたのはドキュメンタリー映画『小さき声のカノン』(2015年3月7日公開)です。
もうすぐ3月11日、東日本大震災から4年です。地震から津波へ、そして福島第一原発事故。あれから4年もたっているのに、被災地の人々の生活は決 して満足のいくものではありません。特に原発による汚染は、その地の人々にとって今でも恐怖です。それはチェルノブイリ原発事故で苦しむベラルーシの人々 も同じこと。
このドキュメンタリーは未来ある子供たちを苦しみから守りたい、健康な人生を送らせたいという福島とベラルーシの家族の闘いを追いかけた映画です。
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福島県二本松のママたちは「学校はいつも通りスタートさせるようだけど大丈夫なの?」と不安です。学校には行かせたいけど、校庭で寝転がっても大丈夫か、プールに入っても大丈夫か……心配事は次々と出てきます。でもその真実は明確にされないまま。
ママたちが通学路の放射線量を計ると基準値を大きく超えており、青ざめてしまうという……。正直、映画を見ていて「まだこんな状態なの?」とビックリです。
【立ち上がる全国のハハレンジャー】
放射能の恐怖にさらされながらも生きて行かないといけないので、お母さんたちは子供のために立ち上がります。佐々木さんの周囲のママたちの連携プレーは見事で「ハハレンジャー」たちの団結力の素晴らしさ。なんとたくましいママたち!
彼女たちは全国から届く安全な野菜を子供に食べさせ、長い休みには保養へと行きます。ちなみに記者は「保養」を初めて知りました。これはチェルノブ イリでもあるのですが、健康な体を取り戻すための合宿です。安全な場所で安全な食べ物を規則正しい生活の中で食べて、放射能を気にせず屋外で思い切り遊 び、放射能を外に出すのです。
この施設に来た子供たちの放射能の数値は来たときより帰るときの方が明らかに減っている! この効果を目の当たりにして、引っ越す家族もいましたが、また汚染地区に戻っていく家族もいます。NPO法人「チェルノブイリのかけはし」の代表の野呂さ んは「せっかく減ってもまた戻ったら……」と心配そうに見送ります。堂々巡りになっていることは、見ているこちらも歯がゆいです。
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この映画の鎌仲監督はこう語っています。
「チェルノブイリ原発事故のとき、政府は原発から30km圏内の子供たちを国が持っているキャンプ場などに避難させたそう です。それも短期間のうちに。そしてベラルーシでは、現地療養させようとか、放射能のない場所に行かせようなど様々な意見が出ました。政府は保護者の賛同 や、学者たちの声を受けて、保養施設を国内に作ったんです。そしたら明らかに数値が減っていった。結果が出たんです」
福島原発事故のとき、避難してほしいという通達はあったけれど、これほど積極的にやっていたのか? もっと「保養」を広めるべきなのではないか、まだまだやるべきことはたくさんあるようです。
小児甲状腺癌の発症ピークは、事故から10年後だそう。未来を担う子供たちを救うためにも、この映画を広めたい! 多くの人の理解と協力が子供たちの健康と未来を支えるのです。
全文は放射能を体から出す施設「保養」? 福島とチェルノブイリの日常…ドキュメンタリー映画『小さき声のカノン』が発信【最新シネマ批評】