川内原発の火山審査に専門家から疑義噴出 via 東洋経済

審査「合格」の根拠崩れた形に

九州電力・川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の火山審査の妥当性が、極めて怪しくなっている。

原子力規制委員会は8月25日と9月2日に、原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チームの会合を開催。実質的に川内原発の新規制 基準適合審査・火山影響評価についての検討の場となったが、そこで火山専門家から規制委の判断結果に対し、その前提を根本的に否定するような意見が相次い だためだ。

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海外の一論文を無理やり一般化し適用

そもそもの間違いは、川内原発の火山審査の場に専門家を入れなかったことにある。審査が終わった後になって、規制委は火山活動のモニタリング方法を どうするかということに関し、検討チームをつくって火山学者などの専門家を集めたが、そこで認識の根本的な誤りを指摘されるという失態を演じている。

規制委の火山審査では、「Druitt et al.(2012)(以下、ドルイット論文)がVEI7以上(VEIは噴火規模の単位)の噴火直前の100年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定し ている知見」を主要な根拠として、川内原発の運用期間中にVEI7以上の巨大噴火が起こる可能性は十分に小さい、と結論づけた。さらに同論文を根拠に、モ ニタリングを行うことで巨大噴火を予知でき、さらに予知してから噴火までに核燃料を搬出する十分な時間があると判断している。

だが、8月25日の第1回会合において、火山噴火予知連絡会会長でもある藤井敏嗣・東京大学名誉教授は、「ドルイット論文は、3500年前のサント リーニ火山のミノア噴火では、準備過程の最終段階の100年間に数立方キロメートルから10立方キロメートルのマグマ供給があったということを述べただけ で、カルデラ噴火一般について述べたものではない。これは本人にも確認した」と指摘。ドルイット論文という一例を、川内原発周辺を含めたカルデラ一般に適 用しようとする、九電や規制委の判断根拠に疑念を示した。

また九電は、巨大噴火の早期の段階であるマグマ供給時の地殻変動や地震活動を観測することでモニタリングを行う計画とし、規制委もこれを妥当と認め た。しかし、藤井氏はドルイット論文を踏まえ、「マグマ供給に見合うだけの隆起が起こるとは限らず、マグマだまりの沈降による拡大で隆起が生じないか少な い可能性がある」と指摘した。これらは九電と規制委の判断根拠に重大な欠陥があることを示すものだ。

東京大学地震研究所の中田節也教授は、「巨大噴火の時期や規模を予測することは、現在の火山学では極めて困難、無理である」と、予知は可能とする九電、規制委の認識を根本的に否定した。

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しかし、あくまで「何らかの前駆現象が発生する」という前提。そして、「何らかの異常が検知された場合にはモニタリングによる検知の限界を考慮して、空振 りも覚悟のうえで巨大噴火の可能性を考慮した処置を講ずることが必要である。また、その判断は規制委、規制庁が責任を持って行うべきである」とした。

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こうした案に対して専門家からは、「(火山学者でもわからないのに)事業者が本当に異常を判定できるのか」(棚田氏)、「規制委・規制庁が責任を 持って判断を行うべきというのは非常に重い。そうした判断ができると言っていいのか」(石原和弘・京都大学名誉教授)、といった疑問が改めて示された。

結局、根本的な認識のギャップを残したまま、第2回会合の結論としては、異常の指標化などモニタリング方法の具体化や精度の向上、国家主導も含めたモニタリング体制などの方法論、組織論的な対応について第3回会合から検討していく、という方向になった。

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