東京電力福島第1原発事故から3年半を前に、福島県飯舘村の住民の4割に当たる約2500人が10月をめどに国の原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介手続き(原発ADR)を申し立てることを決めた。住民主導としては最大の集団申し立てになる。(大渡美咲)
「飯舘村民は怒っている。あまりにもおとなしすぎた。原発の恩恵もなんもない村に放射能が降ってわいた。そういう矛盾に声を上げて東電に事故の究明や説明をちゃんとさせようということで申し立て団を結成した」
今回の申し立ての中心となっている飯舘村で酪農を営んでいた長谷川健一さん(61)が強い口調で話した。
飯舘村は、放射線量に応じて、避難指示解除準備、居住制限、帰還困難の3区域に分けられている。補償内容も区域によって決められており、住民同士の軋轢(あつれき)を生む原因となっている。
今回の申し立て以前に、帰還困難区域に指定されている長泥地区がすでにADRを申し立てており、和解が進められている。申し立てから1年半以上が経過しての和解で住民たちも苦しい思いをしたが、センターは、被曝(ひばく)不安への慰謝料として、1人当たり50万円(子供と妊婦は100万円)を提示し、東電も支払いに応じた。ADRの集団申し立てで、東電が被曝不安への慰謝料を支払うのは初めてという画期的な和解となった。
今回の申し立ても長泥の申し立てをベースに行っており、初期被曝の慰謝料や避難の長期化などの慰謝料の延長と増額、不動産賠償の増額などを求める予定だ。長谷川さんは「個人で東電に直接請求できる人と、そうでない人の賠償格差が大きくなっている。それを埋めるために立ち上がらなければいけない」と話す。
住民らがまとまって立ち上がる一方で、ADRでは、東電が和解案を拒否する問題が相次いでいる。浪江町では、馬場有町長が「共通する被害は町が代理人になって被害救済を行う」と、町が主導して町民約7割の1万5千人が参加して精神的賠償の増額を申し立てた。しかし、東電は支払いを拒否している。
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