福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク
Save Fukushima Children Lawyers’ Network (SAFLAN:サフラン)
避難を選ぶ子どもと家族にその道を
福島第1原発事故は、極めて広範な放射性物質の飛散をもたらした。政府によれば、1~3号機から放出されたセシウム137の量は広島に投下された原爆の168個分にのぼり、追加被ばく線量が国際放射線防護委員会(ICRP)が定める公衆被ばく限度である年間1mSvを超える土地は、日本の国土の3%に及ぶという。
[…]「避難する権利」の見取図
避難問題は、低線量被ばくの影響に直面した福島の人びとの権利として語られる必要がある。彼ら・彼女たちは、放射線被ばくについて適切な情報を与えられ、避難を選択した場合には必要な支援を受けることができる権利を有する。これを「避難する権利」と名付けよう。その意義を略述すれば、次のようになる。
第一に、避難を選択することは人権である。すなわち、家族の健康を維持し、子どもが安心して発達することができる環境を確保することは、人間の尊厳の根幹に関わる要求であって、国家はこれを最大限尊重するべき義務を負う。
第二に、避難は権利=選択の問題であり、義務ではない。放射線の確率的な影響に対する人びとの対応は多様であることを、正面から承認する必要がある。政府による避難指示は、居住権や財産権への強度の制約であって、濫用されるべきではない。避難は選択の問題であり、避難を選択した者にも、滞在を選択した者にも、相応の合理的な理由があるはずだ。いずれの選択をも尊重し、避難者にも滞在者にも必要な支援が与えられることで、同じ原発事故の被害者である両者間の分断を避けることができよう。
第三に、避難する権利は国家への請求権であり、避難を選択した人びとには、これを可能にするだけの国家による支援がなされる必要がある。避難の選択が、経済的余裕がある一部世帯の特権であってはならない。国際環境NGO FoE Japanと福島老朽化原発を考える会のアンケート調査によれば、避難したくてもできない人の多くが、経済的不安、離職の危険をその理由に挙げている。学校疎開を求める郡山市民の裁判において、郡山市は「子どもには転校の自由があり郡山市には責任がない」と主張しているが、避難希望者の経済的苦境を理解しないものと言わざるを得ない。