2011年09月12日
【戻れない 街も自分も 雑貨店「仮庵」東大見で再開 紺野奈緒子さん】
「心の中には、被災地を離れた罪悪感が常にあります」。紺野奈緒子さん(55)は、今の心境をそう語る。東近江市乙女浜町に、古民家を改 装した雑貨店「仮庵(かりいお)」を先月25日に開いた。再起に向けて、新しい一歩を踏み出したはずが、いつも後ろめたさがつきまとうのだという。
紺野さんはあの日、東京電力福島第1原発から20~30キロ圏内の福島県南相馬市にいた。3月11日午後2時46分、経営していた雑貨店 「仮庵本館」で棚卸しの最中に、今までに経験のない激しい揺れを感じた。慌てて外に飛び出ると、大地が波打っていた。店に戻ると店内は商品が散乱し、足の 踏み場もない状態だった。「これで棚卸しをする必要がなくなった」。思わず声を出して笑ってしまった。だが、すぐに原発の存在を思い出し、不安になった。