原発を持つ大手電力9社の株主総会が28日午前、一斉に始まった。4月に電力小売りの全面自由化が始まり、電力会社を取り巻く環境は変わりつつあるが、各社首脳は改めて原発の必要性を強調。今年も9社すべてで「脱原発」を求める株主提案が出されたが、いずれも否決される見通しだ。
9社の先陣を切って川内原発1、2号機(鹿児島県)を昨年再稼働させた九州電力。瓜生道明社長は「再稼働や燃料費の大幅な下落で黒字を確保することができた。玄海原発(佐賀県)の早期再稼働に向けて取り組む」と説明した。関西電力は高浜原発3、4号機(福井県)を今年再稼働させたが、大津地裁の仮処分決定で運転差し止めを命じられた。八木誠社長は「地元を始め、社会の理解活動に全力を尽くす。原発は経済性や環境問題の面で重要な電源。早期の再稼働で一日も早い電気料金値下げを実現する」と語った。
東京電力ホールディングスの広瀬直己社長も「重要な経営課題である柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けた対応を着実に進める」と主張。福島第一原発事故で「炉心溶融」の公表が遅れた問題については「社会の皆様にご迷惑とご心配をおかけした。二度と起きないよう再発防止を徹底する」と謝罪した。
この日、9社には計73件の株主提案があり、多くが原発からの撤退など「脱原発」を求めた。これらの提案の可決には総会に出席した株主が持つ議決権の3分の2以上の賛成が必要。いずれも否決される見通しだ。
九電株主「震災で屋内退避不可能」
九電の株主で熊本県水俣市の永野隆文さん(61)は28日朝、株主総会の会場前で他の株主らに「脱原発しかない」と訴えた。
熊本地震では家屋被害は十数万棟にのぼり、余震の不安から今も車中泊を続ける人がいる。その経験から、「震災が起きれば屋内退避など不可能で、原発事故の避難計画は役に立たない」と指摘する。
東電の株主総会の会場前では、「脱原発・東電株主運動」のメンバーらがチラシを配った。