東京電力福島第一原発事故後、福島市内の子どもや保護者が感じる不安やストレスは弱まっているものの、他県と比べると依然、強いことが、福島大の災害心理研究所が10日に発表した調査結果からわかった。筒井雄二教授(実験心理学)は「保護者と子どものストレスは密接に関係している。保護者へのケアが必要だ」と話す。
原発事故の心理的な影響を調べるため、2011年から毎年実施。1月に福島市内の8小学校、8幼稚園の保護者に質問用紙を配った。回答があった2854件のうち、震災時も現在も同市内に住み、母親が回答したケースを分析した。
放射能への不安について聞いた「子どもに外遊びをさせるか」という質問に、「させない」と回答した人は、12年までは半数を超えていたが14年は4・3%。一方、「食品の産地を気にするか」という質問では、「非常に気にする」は12年より減ったが、14年も54・5%で過半数を占めた。
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母親から見た子どもの様子については、「赤ちゃん返り」が「よくある」「ときどきある」とした人は11・1%(他県0・8%)。癇癪(かんしゃく)を起こすことが「よくある」「ときどきある」は45・1%(他県25・5%)だった。これをストレスとみて、母親の場合と同様に19項目の回答を点数化し平均すると、子どもの場合も減ってはいるが、他県より高い傾向が続いている。一方、「子どもの将来について悩みが増えたか」という質問で、「非常にそう思う」は38・1%、「ややそう思う」は43・2%で、あわせて8割を占めた。
筒井教授は「頭ではわかっていても感情的に納得できない面があり、不安やストレスをゼロにすることは難しい。親のストレスが子どもに影響しないような支援の仕組みにつなげたい」と話している。(清野有希子)
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この筒井教授の「頭ではわかっていても感情的に納得できない面」という捉え方からは、問題はすべて精神面にあり、実体——政府、自治体、東電などの対応——にもストレスの原因があることを考慮しない姿勢がみえてくる。