エネ計画閣議決定:「原発事故忘れたのか」被害者怒りの声 via 毎日新聞

原発再稼働を推し進めようとするエネルギー基本計画が11日、閣議決定された。東京電力福島第1原発事故を引き起こした東日本大震災から、ちょうど3年1 カ月。事故で放射性物質を浴びた地域は広範囲に及んでおり、後遺症に苦しむ住民は「政府は私たちを忘れたのか」と怒りの声を上げた。

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福島第1原発から100キロ以上離れた栃木県鹿沼市のシイタケ農家で、出荷制限を受けている岩本文雄さん(72)は「原発事故によって人生を狂わ された」と語気を強める。昨年、四国からシイタケの原木を取り寄せて生産を再開したが、卸先は既に他の農家と取引している。今後、再開できても消費者に届 く保証はない。「原発のコストは、私たちのような被害も含めたら決して安くない」と話した。

群馬県沼田市の主婦、奈良英子さん(49)は原発事故後、3人の息子たちの健康への影響が心配になり、 放射能関連の書籍を買い込んで必死に勉強した。小中学校に校庭の除染を申し入れると「風評被害をあおる」と言われ、地域社会が分断されるのを実感した。 「事故原因も究明されていない中でなぜ再稼働を進めようとするのか理解できない」と怒りをにじませた。

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 ◇町工場は決定支持

高い電気代に苦しむ中小企業経営者や、地域経済の低迷に苦しむ原発立地自治体の住民からは閣議決定を支持する声が上がった。

「決して原発に賛成なわけじゃない。でも町工場にとって電気代高騰は死活問題だ」。東京都大田区で自動 車部品などを手掛けるプラスチック成形「一英(いちえい)化学」の西村英雄社長(72)は苦しい胸の内を語る。原発事故後、電気代は月60万円から80万 円超に膨らみ、経営が逼迫(ひっぱく)。2年前、区内に事務所を残して工場を売却、拠点を埼玉に移した。「1個何円、何十銭という仕事でいつも赤字すれす れ」。消費増税も加わり、経営は限界に来ている。「『原発反対』を大声で言える人は、仕事に電気が関わっていない人じゃないか」と語った。

中部電力浜岡原発がある静岡県御前崎市のホテルで支配人を務める蔦林良(つたばやしただし)さん (51)は「再稼働の動きが進んで良かった」と歓迎する。利用客の7〜8割は原発関連業者。2011年5月、菅直人首相(当時)の要請で浜岡原発が運転を 停止すると、客足は一時、半分に落ち込んだ。蔦林さんは「地域の人は原発で生計を立てている。再稼働しないと経済は厳しい」と話した。

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 「原発は壊れたら人間の知恵で制御できない。動かしてほしくない」と話すのは、千葉県我孫子市の住民団 体「広域近隣住民連合会」事務局長、小林博三津(ひろみつ)さん(63)。原発事故で拡散した放射性物質に汚染された焼却灰を一時保管する県営施設の近く に住む。住民の反対を押し切って搬入された520トン以上の灰は、使用期限(2015年3月末)まで1年を切った今も県営施設に残されたままだ。小林さん は、国の政策を「原発を稼働させれば何とかなるといういいかげんなやり方だ」と批判した。【松本晃、塩田彩、橋本利昭】

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