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原発ゼロへ。勝負はすでについている via 幻冬舎Plus

菅直人

福島原発も全国の原発の問題も、もう先延ばししない――。急成長する再エネの今を追いながら、原発全廃炉への道筋をまとめた『原発事故10年目の真実 〜始動した再エネ水素社会』(菅直人著、2/25発売)。3.11で総理大臣だった著者が、180度方針転換をしてからこの10年でしてきたこと、わかったこととは。日本のエネルギー問題の全貌と、未来への希望が見える本書から、試し読みをお届けします。

(略)

私は総理在任中はもとより、退任後も、少なくとも年一回は福島第一原発の現地視察を続けている。毎年現地に行くと外見はかなり変化してきているのが分かる。最も大きな変化は、敷地内にぎっしり並ぶ、汚染水を貯蔵するタンク群だ。事故を起こした原発は爆発で破壊された建屋が修復されてきた。そのほか新しい建物も増えている。

しかし、メルトダウンし、さらにメルトスルーを起こした1号機から3号機の内部は、事故直後からほとんど変わっていないはずだ。核燃料が溶け、他の金属物質と混ざった「燃料デブリ」と呼ばれる放射性廃棄物が、格納容器の底などに大量に残されていることは確認されている。しかしデブリは人間が近づけば短時間で死に至るほどに放射線量が高く、格納容器内に人が入って作業することは不可能だ。事故から10年が経過した今日でも、ロボットなどでデブリの位置や形状を調査している段階である。

ここに原発事故の恐ろしさがある。通常の火災や爆発事故であればどんな大規模なものでも、10年も経過すれば、爆発物はなくなり、瓦礫は撤去され、装置のあった敷地は更地に戻され、新しい建造物ができているだろう。

しかし福島第一原発では10年が経過しても事故を起こした原発の本体はその場所に残り、敷地は更地に戻すことはできず、今後原発の跡地をどうするかの計画すら立てられない。原発の敷地だけではない。原発の周辺で暮らしていた何万もの人々の多くが従来住んでいた場所には帰れていない。これが長期に及ぶ放射能被害の怖さだ。

私は福島原発事故が起こるまでは、日本の原子力技術者は能力が高いので、チェルノブイリやスリーマイル島のような人為的ミスによる大きな原発事故は起こさないと考えていた。こうした「原発安全神話」を原子力の専門家の多くも信じていた。

しかし実際には世界で最大の原発事故が日本で起きた。日本列島は世界の中でも最も地震の多い地域であり、島国であることから地震に伴う津波も歴史上きわめて多い地域である。それなのに、地震と津波による原発事故の可能性をほとんど考慮していなかったのだ。今ではこのことについての不明を恥じている。日本の海岸沿いに多くの原発を建設し、原発は事故を起こさないと考えてきたことが間違いであったと痛感している。

そこで総理大臣として福島原発事故に直面した政治家の責任として、日本の原発をゼロにすることを総理退任後の政治活動の中心にすると決意した。

(略)

福島原発事故から10年が経過したが、この間、日本では原発の新設はなく、稼働する原発も限られている。近年では、原発による発電量は日本全体の発電量の3パーセント程度で推移しており、再生可能エネルギー発電の6分の1程度に留まっている。実質的には原発ゼロはほぼ実現していると言える状態だ。しかし最近「原子力ムラ」による原発復権を目指す動きが目立ってきた。

そうしたなか、菅すが義偉よしひで総理は2020年10月の所信表明演説で、2050年までにCO2排出ゼロを旗印に掲げた。私もCO2の排出削減には賛成だ。しかしCO2の排出削減を口実に原発回帰を図る自民党の動きが活発化し始めており、警戒が必要だ。

原発の新設は世界的に安全基準が厳しくなり、建設コストも従来に比べ2倍から3倍に高騰し、再生可能エネルギーなどに比べ大幅に割高になることから、採算に合わなくなっている。そのことは大半のエネルギーの専門家には分かってきている。

それにもかかわらず、原子力にかかわる利権を温存継続しようとする日本の原子力ムラは、原発の再稼働や新設に向けて暗躍を続けている。

この10年間で原発が発電した電力量は微々たるもので、原発へのこれ以上の投資は採算が合わない。国民的立場に立てば、原発をあきらめて再生可能エネルギー中心の発電に舵かじを切ることが望ましいことは、今やエネルギー専門家の常識である。

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私はこの本で「原発ゼロ」が実質上すでに実現しており、避けられない道だということを解説したい。将棋で言う投了図の解説を試みたい。

そしてもうひとつ、「原発ゼロ」であってもソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)など再生可能エネルギーを活用することで、日本が必要とする電力は100パーセント供給可能であることも、具体的に説明したい。

全文は原発ゼロへ。勝負はすでについている

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