2011年に起きた東京電力福島第1原発事故の避難者を対象に、生活上の課題を探ったアンケートを実施した関西学院大災害復興制度研究所(兵庫県西宮市)は27日、結果を公表した。収入や雇用状況の悪化が鮮明になり、多くが元の居住地に住民票を残したままだということも判明。同研究所は、避難先でも住所地と等しい市民サービスを受けられる新制度などを政策提言していく。(金 旻革)
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居住地の内訳は帰還困難区域14%(100人)▽避難指示解除区域20%(140人)▽指定なし60%(417人)▽不明5%(37人)。同研究所によると、自主避難者を含む全国規模の避難者調査は初めてという。
総収入の変化では、震災前に全体の7割弱を占めた「300万円以上~2千万円以上」の人の割合が、2019年では低下=表参照。逆に震災前に2割強だった「300万円未満~収入無し」が全体の4割弱に増えた。また、新型コロナウイルスの影響が「大変ある」「少しある」と答えた人は5割超。職業は非正規雇用や無職、専業主婦が、震災前の4割強から現在は6割強になっている。
住民票の所在地については自主避難者の9割近くが現在地に移した一方、強制避難した避難指示解除区域の7割弱の人々が移しておらず、帰還困難区域の避難者の9割弱もそのままだった。主任研究員の斉藤容子准教授は「古里への思いや、避難者でなくなれば税の減免・免除などの経済支援を失う不安などがある」と分析する。また、福島県からの避難者に将来的な帰還の意向を尋ねると「戻るつもりだ」は138人(26%)、「戻るつもりはない」が341人(65%)だった。
同研究所は調査結果を受けた提言として、避難者が避難先で「準市民」資格を得る新制度▽金銭的な困窮状態に陥らない「避難時ベーシックインカム(最低所得補償)」導入▽避難者の生活の安定などを図る「原発避難者援護法」制定と「原発避難者援護基金」創設-を国に働きかける方針。斉藤准教授は「復興はまだ終わっていない。誰もが当然として逃げる権利を保持し、新しい土地で生きていける制度設計が必要だ」と強調した。