原発事故への怒り演劇で伝える 相馬高「放送局」OGら任意団体立ち上げ 各地で30作品上映会 via 河北新報

東京電力福島第1原発事故と東日本大震災をテーマに演劇や映画を制作してきた福島県立相馬高(相馬市)の部活動「放送局」のOGと元顧問が、任意団体「相馬クロニクル」を立ち上げ上映会を続けている。「高校生たちが絞り出した大人への怒りや葛藤を伝えたい」との思いが原動力だ。

 2012年初演の劇「今伝えたいこと(仮)」が今年8月、オンラインで約30分上映された。原発事故後、1人の女子生徒が突然自殺。友人2人が理由を探る中、女子生徒は津波で家族を亡くし、福島県民だからとインターネットで誹謗(ひぼう)中傷を受けていたことが明らかになっていく内容だ。

 「周辺地域は原発のおかげで潤ってきたと思う。でも、私たちの世代が決めたことじゃないよね?」「子どもの訴えを無視しないで」「ほら、こんなに叫んでも、結局届かないんだよ」-。壇上から観客へ次々とぶつけられる言葉は重い。

 上映後、相馬クロニクルメンバーで会社員の荒優香さん(24)は画面の先の観客へ「日本で原発事故がまた起きるリスクはある。福島のことを忘れないで」と訴えた。

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今も関わり続けるのは上映後に全国の参加者がそれぞれの3月11日の記憶を語ってくれるからだ。「被災体験には重いも軽いもない。自分はこうだったと思い出し、考える場になれば」と話す。

 放送局は11~18年に約30作品を制作した。顧問だった教諭渡部義弘さん(50)は「優等生的に振る舞いがちな災害下の高校生が、自ら批判的な視点を身に付けてくれた」と目を細める。他校に異動後も卒業生と上映会を続けてきた。

 リピーターは多く、青山学院高等部(東京)の教諭武藤拓さん(48)は4回ほど参加。「震災当時の高校生の気持ちが胸に刺さる。教え子が社会の複雑な問題に向き合うきっかけになる」と同校での上映会を検討する。

 新型コロナウイルスを機に始めたオンライン上映会で、米国在住の日本研究者など参加者の幅が広がった。来年2月にはドイツの大学とつないで開催する予定だ。

 「今も古びない作品に、私自身が魅了されています」と渡部さん。世代や国境を超え、生徒の思いを届け続ける。

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