「財源など課題があるのは承知している。でも一番大切なのはやろうとするかしないか。ここに尽きる」。宮城県の村井嘉浩知事が東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働に同意を表明する5日前、女川町の須田善明町長は避難道路の整備に向けた村井知事の姿勢をこう問いただした。
村井知事は「まだまだ不安があるというのは重要な点だ」と理解を示す一方で「県の責任も大きいが国策で進めている」とし、整備について具体的な回答を避けた。町が整備を求める「国道398号石巻バイパス」の事業費は200億円と巨額で、予算化の見通しは立っていない。
石巻バイパスは全長10.8キロメートルで、三陸沿岸道石巻女川インターチェンジ(IC)と町を結ぶ。すでに6.1キロメートル部分は整備を終えているが、残り4.7キロメートルは未着工のまま棚上げ状態となっている。現状の避難道路は片側1車線が多くて狭く、避難時に渋滞する可能性が指摘されている。
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須田町長は「一つの事業をやってもらうことを取引材料にしているわけではない」と繰り返す。だが同意表明の直前に村井知事にくぎを刺した姿は同意を機に避難道路の整備を迫る「条件闘争」に打って出ているようにもみえた。その背景には国が手厚く復興を支援する「復興・創生期間」が終了する地元からの強い要望も影響している。
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11日の村井知事、須田町長、石巻市の亀山紘市長の3者会談。終了後の記者会見で須田町長は避難道路について「どういう予算を活用できるのか、県でもやれる部分はあると思う。国に対してはチーム戦で取り組む必要がある」と、県と共闘する姿勢を強調した。
亀山市長も原発が立地する牡鹿半島の道路などを挙げ「これらの道路整備は住民の不安解消につながる重要な課題だ」と訴えた。道路整備は避難計画の実効性向上にとどまらず、物流や観光などへの波及効果も大きい。
地元が同意し再稼働に向けた当面の課題は避難道路の整備に絞られた。