東京電力福島第一原発で発生した汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水の処分を巡り、政府は今月中にも関係閣僚による会議を開き、海洋放出処分の方針を決める。関係者への取材で分かった。漁業者を中心に「風評被害が起きる」として放出に反対の声がある中、事故発生10年を前に、汚染水対策は新たな局面を迎える。(小川慎一、小野沢健太)
◆風評被害対策は別に検討
政府は、風評被害対策を別途検討する方針。
福島第一原発では、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)が残る原子炉への注水などで大量の汚染水が発生し続けている。東電は、汚染水をトリチウム以外のほとんどの放射性物質を除去できる多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した後の水をタンク内に保管。量は約120万トンに上る。
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保管する処理水の約7割は浄化が不十分で、トリチウム以外の放射性物質も国の排出基準を超えて残る。東電は処分に向けた再浄化の試験中で、15日の記者会見では基準を下回る効果が確認されたと発表した。
◆全漁連は海洋放出「絶対反対」
海洋放出を巡っては、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長が同日、経済産業省と環境省で両省大臣と面談。「漁業者の総意として絶対反対」とする要請書を手渡し、「海洋放出となれば、風評被害は必至。漁業の将来展望を壊しかねない。慎重に判断してほしい」と求めた。 同行した福島県漁連の野崎哲会長も環境省で「来年4月からの本格操業を目指し、一丸となって進んでいる。生業を続けていく意味で反対」と訴えた。